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telephone(手塚)
あと、5秒…





3、2、1…





―――カチッ





『―――♪』


カウントが終わるのと同時になった音楽に桃城は笑った。
相手を確認することなく耳へと当てる。


「部長?」

『あぁ。時間はあるか?』

「はい。大丈夫ですよ」


付き合ったその日から手塚は九時きっかりに電話をしてくる。
それが分かっているというのに時間を空けとかないわけがない。
お陰で、宿題もきちんとこなすようになった。
前に部室で竜崎に宿題をしてくるように怒られた時、手塚は自分の所為だと電話をしてこなかったからだ。


『宿題は済んだのか?』

「はい」

『風呂には?』

「入りましたよ」

『明日の…』

「部長」

『……すまない。俺の悪い癖だな』

「部長が俺の心配をしてくれてるのはすごい嬉しいですよ」


クスクスと笑ってベッドへと寝転がる。足をパタパタとさせながら耳を傾けた。


『………』


しかし一向に声は聞こえず、桃城は不振に思いながら相手を呼んだ。


「部長?」


電波悪いか?


起き上がり窓際へと移動する桃城に


『……電話だけでも別のものが聞きたいんだが…』

「へ?……あ…。えと……手塚、さん」

『譲歩したか?』

「……ま、まだ恥ずかしくて…」


手塚のクスッと笑う声が届く。


「わ、笑わないでください!!」

『…っすまない。あまりにお前が可愛くてな』

「かっ!?////」


手塚の言葉に窓枠にかけていた手がはずれガッと頭を打った。桃城?と呼ぶ声に慌てて何でもないと返しベッドへと戻る。
額が思った以上に悲鳴をあげたようだ。
しばらく額をさすっていたがそれが治まるとともに桃城に決意を与えたらしい。ぎゅっと携帯を握り締める。


「……あの、ぶちょ…手、塚さん、は!!」

『何だ?』

「あ…えと…好きなタイプはなんですか!?」

『………』

「………」


―――何言ってんだ俺ぇぇぇ!?


自分で自分を殴りたくなる。
付き合っているのに好みのタイプってなんだ。
桃城が聞きたかったのは好みの『物』なのだがこれでは誰が聞いても好きな子だろう。
第一これでまったく違うタイプを言われたらそれこそ自分を許せなくなる。


「あ、ちが…」


黙る手塚に泣きそうになって言葉を紡ぐがそれに反し手塚はとても嬉しそうな声を桃城に届けた。『それは今愛の告白をしていいということか?』

「……え?」

『お前はいつも恥ずかしがって止めるだろう?俺がお前をどんなに愛しているかをいつも囁きたいと思っているのに』

「あっ…」


思い当たる節があるらしい。真っ赤になって布団を掴む桃城だが手塚にそれは分からない。

いつも手塚が桃城に触れると桃城は慌てて裾を掴み首を横に降るのだ。
恥ずかしいのもあるが手塚のそれに耐えられない自信のある桃城は必死で、手塚はその掴む手と瞳に分かったと頭を撫でる。


『しかしお前が望んでくれたのだからな』

「手塚さっ////」


そう、電話では裾を掴むことも上目使いをすることも出来ない。つまり手塚をとめることも。





『愛してる。その吐息さえ独り占めしたいほど。俺はお前なしでは生きていけない』





ドスンと、ベッドから盛大に落ちた音が手塚の耳に届いた。


END
(2009/04/21)


「…っどうしよう、手塚さん」
『ん?』
「身体が熱くて眠れないッ」
『っ////』

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