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ある夏の日(樺地)
「…砂糖」

「OK、全部か?」

「半分入れて…少し混ぜてから…」

「もう半分な」

「ウス」


樺地の家にてお菓子作りを決行中の桃城。
甘い物が好きだと言った桃城に、樺地が教えると家へ招待してくれた。


「〜〜♪」


ついつい鼻歌を口ずさむ。いつもいつもどこかのアホが邪魔しに来るので二人きりは初めてだった。


〜〜〜♪♪♪


「……………デンワ?」


そんな幸せいっぱいの桃城にこれまたえっらい耳障りな音が届く。
噂をすればなんとやら。
まさかあのアホではないだろうかと樺地を見る。


「…ウス。…跡部さん」


コノヤロウ。


桃城は今すぐ樺地から携帯を奪い叩き付けたい衝動にかられた。


「あの…今日は…大事な用が……すみま、せん」

「樺地…」


チラリと桃城を見る樺地は困った顔から優しい笑みへと変わる。
桃城だからこそ分かる表情だ。
樺地はそのまま一言、二言かわし電話を切った。

樺地が跡部の用件を断ることは余程のことだ。その所為で今まで二人きりになったことがなかったのだから。
それはつまり樺地も今日を楽しみにしていたということで、桃城は止めていた手をまた動かし始める。


「次は牛乳だよな?」

「ウス」


――ピンポーン


「…今度は誰だよ」


しかし今度はインターホンが二人の動きを止める。
桃城にそのまま続けるように言い樺地は玄関へと向かった。


―――――


「…で、アンタは何しに来たんだ?」


ケーキはもうオーブンの中にある。
桃城は向いに座るアホ…もとい跡部を睨み付けた。


「あーん?てめぇには関係ないだろーが」

「…っっ樺地は用があるって断っただろうが!?」


バンッとテーブルに手を叩き付ける。
樺地は真ん中でオロオロと二人を見守ることしか出来ない。


「聞いてねぇな」

「…っの!?」

「……桃っ」

「へ?樺地?」


しかし桃城が跡部に掴みかかろうとするとその手を掴んだ。


「樺地?」

「桃城のケーキ…出来たので」

「アンタは食わなくていいッスよ」

「ハンッ。てめぇに食えるもんが作れるとは思えねぇがな」

「…友達いないだろ、アンタ」

「………」


グッ。と詰まる跡部にフンッと鼻を鳴らした桃城は満足そうに樺地とともに台所へと向かった。


「お、うまそーじゃん」

「ウス」


ケーキをオーブンから取り出し皿へと盛る。
フォークで一口サイズにすると桃城の前へと差し出された。


「え?…あ…サンキュ」


戸惑いながらも口を開ける。出来たてのパンケーキが口の中いっぱいに拡がった。


「うま!!…ぃ…です…ょぉ…」


満面の笑みで樺地を見上げるがいつの間に詰めていたのか目の前には樺地がいて、何となく後退さる。


「動かない、で…」

「…ぅ…はぃ」


掠められた唇。
樺地はすぐに離れ跡部にと盛られたケーキを運ぶ。


「か、樺地…」

「……ウス」


振り向き様にシィー。と樺地は口に人差し指を当て台所から消えた。
桃城はしばし固まった後、口を両手で押さえズルズルとその場に沈んだ。


END

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