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番外編4


どんよりとした曇り空、今にも雨が振り出しそうな夏のある日。
とあるアパートの一室では部屋の主が居ないにも関わらず、三國の猛将達がテレビを囲んで楽しそうにはしゃいでいた。


凌統「録画の準備出来たましたよ」
呂布「遅いぞカスが」
星彩「関平、邪魔。私がテレビの前を陣取るの」
夏侯惇「たかがテレビ出演でこんなに集まるなお前ら」
曹丕「そんな夏侯惇も三日前からソワソワしていたがな」
馬超「俺もテレビに映りたいんだが、どうやったらこの箱の中に入れるんだ?」
趙雲「馬超殿はまだテレビのからくりが分からないのか?ははっ、引くわ」
丕「夏侯惇よ、父はどうした」
夏「サボっていた分、執務に追われておるわ」
小喬「ねぇねぇ周瑜さま、どうして周瑜さまが身だしなみを整えてるの?」
周瑜「それはな小喬、私がいきなりテレビ出演になったら大変だろう?だからだ」
小「よくわかんないけど、ちょっと気持ち悪〜い!」
周「ははは!そんな事はないぞ小喬………断じてない!!」
小「あはは!顔こわーい!」
凌「あのー、そろそろ静かにしてもらえません?」

貴女本人はテレビに出ることを一切伝えていなかったが、誰か一人が知ったとたん三國中にその噂が知れ渡った。つまり本日の集まりはその噂のせいである。


番組が始まり、皆いっせいにテレビ画面に釘付けとなった。司会者と思われる人物が出てきて、番組のタイトルが大きく映し出された。

【お宝鑑定☆団塊世代】
司会者は信之介(60歳)、隣にはサポートにウメ(85歳)が立ち、番組は始まる。ウメに居たっては団塊の世代でもなんでもないが、信之介のお気に入りの女としてそこに立っているのだ。不思議な番組だ。


趙「始まりましたね」
呂「貴女はどこだ」
馬「というか、なんなんだ?何が始まるんだ?」
丕「これに貴女が出るそうだ」
馬「なんだと!」
夏「何故お前はここにいるのだ…」
馬「趙雲に付いて来ただけだ」
呂「貴女に悪い虫がつかんよう俺も出たい」
小「いいなー。あたしもでたぁーい!」
曹操「儂もー」
夏「ぐぁ!!なんで孟徳が!!」
曹「儂を出し抜こうなど考えぬ事だな」
馬「曹操!ここで会ったが100年目!我が槍で…」
趙「馬超殿、空気をよめ。大体武器は持って来てはいけない約束だろう」
星「馬超殿、少しは無い忍耐を搾り出して」
馬「そ、そんな責めるな!」
趙「とにかく。タイトルから察するに何かを鑑定してもらうのだろうか」
星「私に内緒で何を鑑定してもらうというの」
凌「あ、ほら!貴女が出てきた!」


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信之介『それでは貴女さん、今日はどんなものを見せてくれるんかい』
ウメ『その前に、あたしゃ今日ゲートボールに誘われていたのじゃが…』
貴『何で放送中に言うんですかそういうこと!』
信『はい、出して』
貴『あ、はい!(ついツッコミ癖が)これです』
ウ『なんじゃあこれは…よく見えんがね』
貴『老眼!』
信『ただの石ころ?』
貴『これは、あの有名な劉備が持っていた石です!多分指紋とか付いてるんで鑑定よろしくお願いします』
信『…』
ウ『…』
貴『え?あの、聞いてます?』
信『では…鑑定してもらうとしますか』

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呂「貴女はうつりがいいな。さすが我が妹だ。というかさっきからあのジジイ、貴女に近いぞ、加齢臭が移る」
凌「そういう問題ですかい?」
関「…どういうことだろう?」
丕「劉備からといっていたが」
星「知らない」
趙「私も知らぬぞ?」
曹「!!なるほど貴女…さすがといった所か」
夏「なんだ孟徳」
曹「貴女が言っている事は嘘ではなかろう。確かに劉備に貰ったのであろうな。それを鑑定してもらうということは…」
周「本物と分かれば大金を得られるということか!」
小「貴女ちゃん、やるー!」
馬「そうすればこの家が経済的に裕福になり、うまいもの食い放題!まさに正義の勝利というわけだな!」
関「殿の好きなハンバーグも食べ放題!これで蜀も豊かになるな星彩!」
星「食べたい物を想像しながらパンを食べる日が無くなるのは嬉しい」
丕「蜀は大丈夫なのかそれで」
凌「…そんなうまくいくかねぇ」
呂「今の笑った顔よかったぞ貴女。写真に撮りたいくらいだ」

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ウ『鑑定士の亀吉さん、源三さんや、どうかね?』
亀『なんじゃいこれは。漬物石にもならんぞい』
源『隣町の住んでるわしのいとこの家の漬物も小さいが、それでも足りん…』
貴『どうでもいいわ!』
信『で、どうなんですか。劉備玄徳のものなんですか?』
亀『こんなもん、ただの石っころじゃ』
源『よくもこんなもん持ってきよったな娘っ子さんや』
ウ『…老人をたぶらかして面白いかい…?』
貴『え?たぶらかしてないんですけど。本気ですけどマジで劉備様のやつですよ。何でウメさん泣いてるの?え?皆さんの視線冷たっ』


それは確かに、劉備が酔っ払った時に、貴女に褒美をやろう!と自信満々でポケットから取り出した石だった。
初めは人に酒買わしておいてお礼に石だなんてと切れそうになったのだが、あの劉備のポケットから出てきたのだ。価値がないわけがない。きっと劉備様が大事にしていた御守りかなんかだろうと少し希望を持ってみた貴女は、その時直ぐにこの番組の事が頭に思い浮かんだのだった。


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呂「あのおばあちゃん、俺の貴女になんてことを言うんだ!年寄りだからといって容赦はせんぞ!少し容赦するがな!」
夏「おい!テレビを壊そうとするな!」
凌「そりゃあ、ただの石になんの価値もないわけだ」
小「貴女ちゃんどうしたんだろ?」
趙「確かに貴女殿ならそんなこと分かっているはずだが…」
馬「何で価値がないんだ。劉備殿が持ってた石だぞ?」
星「馬鹿には分からないのね」
周「まさか劉備本人からもらったとは言えぬからな。誰も信じぬだろう」
丕「貴女も貴女なりに苦労があるということか」
小「あたし達がここに来てる事、誰にも言えないし、言ったとしても信じてもらえないもんね…」
呂「うおおおお!俺の貴女ー!!!」
夏「お前そればかりだな」

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貴『…マジで!本気で鑑定してくださいよ!』
源『どう鑑定せいと言うんじゃあ!警備員さんこの娘を外に』
貴『それが本物だと分かれば!売ってお金になれば!くそー!はーなーせー!』
信『残念ながら、0円という事です!では次に参りましょう』
貴『無双っ子達の食料ー!!(ていうかあいつらのせいで消えてゆく生活費ー!)』
ウ『一旦しーえむじゃ』

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関「うっうっ…貴女様!拙者達の為に…!」
丕「うむ…」
趙「…左慈殿を呼んで来ましょう。あの方ならばあれを持っているはず」
曹「そうか、左慈!玉璽だ…玉璽を持ってこさせーい!!」
呂「よし!俺が奪ってこよう!」
凌「いや、ちょっとそれは…」
小「呂布は嫌いだけどあたしも一緒に玉璽奪ってくるー!貴女ちゃんの為だもん!」
星「なんならぶち殺してでも奪う」
関「貴女様の為なら!」
馬「何で玉璽なんだ?」
夏「本物ならば相当な値になるだろうからな」
凌「いやいや、駄目でしょう?まさかあんたら本気なわけないですよね?周喩さんも止めて下さ」
周「知略に関してはこの私に任せて頂こう。そして今度こそ私がテレビに映る!」
凌「ええー!?」
呂「お前等、俺の足を引っ張るなよ!」
曹「では行くぞ!」

この後、ワケも分からずボコボコにされた左慈。
全員(凌統は逃げた)貴女に親切心で玉璽を差し出したが、理由を知り切れた貴女に説教を食らうのだった。


貴女がひた隠しにしていたテレビ出演を言いふらした犯人が張遼だったことが発覚するのはまた別の話。


(090822)

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あきゅろす。
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