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番外編3
大学に入学し、そこそこ楽しい日々を送っている。将来は実家で野菜を作る日々だと決まっているのに、親父がどうしても大学には行っておけというので、嫌々ではないが通っている。
友人も自然と沢山でき、勉強は大変だけれど、有意義な生活だと自負している。
アルバイトのピザ宅配も、始めはそれこそ大変だけれど、優しい先輩ばかりで恵まれているし、誰にも言ってないが好きな人も出来た。隣に住むお姉さんが可愛くて優しくて、すぐに好きになったし、結構いい感じな気がしないでもない。

「なぁ亮、お前んちまだ行っちゃ駄目なわけ?一人暮らしだろ?」
「悪い。ちょっと、事情があってさ」
「女と住んでるとかいわねーだろーなぁ」
「まさか。まぁ、都合いい時にでも呼ぶよ」

ファーストフードで、ハンバーガーにかぶりついている時に、友人のシゲルがそう訪ねてきた。咽せそうになるのをなんとか抑え飲み込むと、友人も気にしないと言う風にコーラを飲み干していた。
悪い。とにかく、ゲーム好きのお前を呼ぶわけにはいかないんだ。
深入りしてこないシゲルに有り難さを感じながら現地解散し、自転車のペダルを軽快に漕いで自宅に向かう。
アパートの駐輪場に自転車を止め鍵をかける。と、自転車の下に500円が落っこちているではないか。もしかして今日は金銭運がいいのかもしれない、飯も友人の奢りだったし。
気分が良くなって、鼻歌を歌いながら部屋までの階段を登った。鍵を取り出したときちらっとお姉さんの部屋を見たが、明かりがついていないのでまだ帰っていないようだ……う、これじゃ俺、変態みたいじゃないか?仕方ないじゃないか、曇りガラスがあるんだから!中を見ているわけじゃない!
意味もなく、かけているお気に入りの黒縁眼鏡を押し上げると、違和感に気づいた。

……何で俺の部屋、電気ついてんだ?

脳裏によぎったのは、泥棒、の文字。ゆっくり鍵を差し込み音をたてずにドアを開けた。だいたい、うちに盗むような物があるはずない。玄関の先はキッチン、トイレ、風呂が敷き詰められているため居間までは距離がある。意を決し、気づかれないように居間まで足を運んだ。




劉備「貴女は雲長の嫁にする予定だからな、諦めてくれ」
曹操「おぬしは馬鹿か?貴女は儂の妾になるに決まっておる」
諸葛「貴女の国は妾制度などないようですよ」
曹「無いのなら 作ってみせよ ホトトギス。あ、これじゃ信ちゃん達にパクリと笑われてしまうな」
小喬「え〜!駄目だよ。貴女ちゃんは陸遜に嫁いで、あたし達と仲良しになるんだから!」
周泰「…」
三「あ、あの…」
諸「ああ、帰ってきましたか。お待ちしておりましたよ」
三國「な、何で皆さんが居るんですか!」
曹「貴女が儂を置いて友人邸に泊まりだというのでな、悔しくて来た」
三「理由になってない気が…。というかどうやってここに入ったんですか…」
小「ベランダのガラス戸からだよ!」
三「そんなはずないですよ!鍵、は…」
諸「私があなたに差し上げている手紙に、鍵をかけないようにと少々暗示を。まさかこんな簡単にかかるとは思いませんでした」
三「ひー!!」
劉「そなたが諸葛亮と同じ名の三國殿か。勝手に入ってすまぬ」
三「い、いや…(みんな本物、なんだよな…)」
曹「話を戻すぞ!とにかく、貴女は儂の妾になるのだ。信ちゃんもきっと賛成するぞ」
三「あの、信ちゃんというのは…?」
曹「織田の信ちゃんしかおらぬだろう」
三「信、長ぁ!?」
小「だいたい、曹操さんはすぐに何でも欲しがりなんだよ!」
曹「む?小喬よ、おぬしも儂の良さに気づいたのか?」
劉「勘違いも甚だしいな」
三「あの周泰さん、何の話をしているんですか?」
周「貴女を…どこが引き取るか…」
三「引き取る?」
諸「だいたい、貴女は背の高い男性がいいといっておりましたよ」
曹「背の高い……」
劉「ほらな!だから雲長と貴女がぴったりだ」
小「陸遜だってこれからすくすく育つんだかんね!おっさんじゃないし!」
劉「おっさん……」
三「あの!」
小「どうしたの?」
三「俺も結構背、高い方だし…まだ若いし、貴女さんのタイプに入っていたりは…」
曹「無い」
劉「無いな」
諸「無いでしょうね」
小「無いんじゃないかなぁ」
周「…気を落とすな…」
三「…すみませんでした」
劉「それより、腹が減ったな」
諸「そうですね。夕餉が楽しみです」
三「…つかぬことをお聞きしますが」
諸「なんでしょう」
三「その、夕餉というのは…うちで、ですか?」
曹「他にどこがあるというのだ。変な奴よ」
諸「両親から毎月送られてくる仕送りには農家でとれた新鮮な野菜や米、栄養などを考えた果物などがあるはずです。最近あなたの体調を心配なさった父君はレトルトばかりにならぬよう少ないながらもふた月に一度お金を振り込み、それだけではまだ心配だとたまに市場で買った魚を新鮮なうちに送って下さっているのだからいきなりのこの人数でも困りはしないでしょう」
三「ひー!!どこまで三國家の事情を把握してるんですかぁ!?」
曹「儂、魚より肉派なのだがな」
小「あたし、果物沢山食べたい!」
周「新鮮な魚…」
三「わかりましたよ…」
曹「うむ。頼んだぞ。で、貴女は将来的にどこがが引き取るとして、呂布の件はどうする。兄という位置で邪魔してくるに違いなかろう」
劉「…じゃあ、殺すというのはどうだろうか」
三「劉備さん!?」
諸「劉備殿、殺すのは後始末が面倒なので却下致します。変わりに貴女を妹にするのはやめていただき、三國殿が変わりに弟になるというのは」
周「…ナイスアイデア…」
三「全然ナイスじゃないです」
小「周泰ノリノリだね」
三「(これでノリノリなのか?)あれ?そういえば蜀と呉はお二人づつ来ているのに、魏は曹操さんお一人ですか?」
小「そういえばそうだね。あたしは女の子一人は危ないからって、周泰が来てくれたんだよ」
劉「私は以前貴女に、君主が一人でくるなんてと馬鹿にされたから」
曹「…」
三「大丈夫なんですか曹操さん」
曹「わ、儂…、貴女ワールドに行くぞと夏侯惇に言ったら、勝手にしろ俺はいかんと…」
三「そんな…」
曹「何か…儂といると…面倒くさい事いっぱいあるからって…」
三「落ち込まないで下さい曹操さん、きっと夏侯惇さんは何か用事があったんですよ」
劉「大変なんだな、夏侯惇も」
曹「もー夏侯惇なんか知らぬ!絶交だ!迎えにくるまで帰ってやらん!」
小「あたしも今おねえちゃんと喧嘩中だから帰らないもんねーだっ」
劉「私も向こうにいても終始暇だからまだ帰らぬ」
三「え…でも今日、貴女さんは帰ってこないんじゃ」
周「二泊三日……」
三「二泊?明日も居ないんですか?まさか皆さん二日間…」
曹「布団なら気にするな、儂のが一番ふかふかならばよい」
劉「私はせんべい布団でも藁でもいいぞ、なれている」
周「敵襲に備え…玄関で寝る…」
諸「私はベッドさえ使えればなんの文句もありません」
小「あたしは貴女ちゃんのベッドかりる!」
三「そ、そんなぁ…」
諸「これからは貴女が不在の時はこちらに来させて頂きます。勿論貴女には内密に」
劉「オッケー」



携帯電話から着信音が静かに鳴り響いたが、俺は出る気が起きなかった。一人でキッチンまでとぼとぼ歩き、野菜が入ったダンボールを漁る。

友人をうちに呼べない理由は、毎日貴女さんの部屋からだだ漏れしている騒音に呂布殿は馬鹿ですなーとか曹操様何やってんですかー!とかが聞こえてくるからで。あのゲームや歴史を知っている人なんて呼べやしないのだ。

シゲルには後でちゃんと言っておかなければならないな。都合いい時に呼ぶよとか普通に言っちゃったけど、残念ながら猛将たちが都合いい日を作らせてくれそうにもない、と。

(090614)

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