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いつわりびと
桜色の君(空閨)
桜が散っている。

もう春が来たのだろうか。花びらが地面を埋め尽くしていた。

「まあ・・・綺麗ですわね。」

閨が感嘆の声を漏らす。

「空さ〜ん、ぽちは〜お腹が空きました〜。」
「ほな、ここらで昼飯にするか。」


「空、肉ばっかりじゃなくてちゃんと野菜も食えよ。」
「うるさいわ駄馬が。」
「うるさくない!俺はお前の体のことを思ってだな・・・」

毎日毎日、同じことばっかり言いおって。女やったら間違いなくおかんやな。
いつものやり取りの中、閨は心ここにあらずといった様子だった。

「閨、どうした?」
「・・・あ、桜があんまり綺麗で・・・見とれてしまいましたわ。」
「そういえば、前も花に見とれてて虫にも気づかないで、気づいたときは大騒ぎしてたな。あのとき俺も巻き込まれたんだよな。」
「そ、それは・・・うう・・・ごめんなさい・・・。」

閨が顔を赤くして謝った。

桜の花びらが、閨の髪にふわりと舞い落ちた。

「ねーちゃん、髪に花びらがついとるで。」
「え・・・本当ですか?」

閨が取ろうとするが全然違うところを触っている。

「もうちょっとそっち・・・ちゃうわもう少し右や。」
「と、取れました?」
「全然取れてへんわ。わしが取ったる。」

桜色の髪に手を伸ばす。

あまり女子の髪なんて触ったことないが、閨の髪はさらさらしていて触っていて心地よかった。

花びらは閨の髪とほとんど同じ色で、よく見ないと見分けがつかない。

閨は顔を赤くしながら、じっとしている。

そんな彼女が可愛らしくて愛しくて・・・

「ほら取れたで。」

「あ、ありがとうございます。」

彼女の可愛らしい顔がもっと見たくて、少し悪戯心がはたらいた。

「桜も綺麗やけど・・・ねーちゃんの方がもっと綺麗やな。」

ああ、やっぱり、かわええなあ。


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