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銀ちゃんの恋編
期間限定拍手/銀ちゃんの恋編(ヤス×銀ちゃん)
「おい、ヤス!寝てんじゃねえ」
二時間前に現場で別れたはずの銀ちゃんは、万年床で眠る俺の首を掴んでぶんぶん振り回してくる。
「…あ、れ…?銀ちゃん…なんで、俺の部屋に…」
眠気が覚めない目を擦りながら銀ちゃんの足元を見る。…するとやっぱり今日も、派手な服に良く映える白い靴を履いていた。俺の部屋、一応土足禁止なのになぁ…。
「くっそー橘の奴、今日もカメラの真ん前に立ちやがって…!」
さっきの俺の質問を聞いていたのかいないのか、銀ちゃんはいつものようにごみ箱の中身をそこら辺にひっくり返し、空になったそれを椅子代わりにして座る。銀ちゃんのイライラした声を背に受けつつ、俺はお茶を入れていた。
「どうぞ、銀ちゃん!」
部屋にある食器で縁が欠けていないのは、銀ちゃん専用の湯呑みだけだ。急須の中のお茶っ葉はもう出がらしだったかもしれないが、銀ちゃんは中身を一気に飲み干し、湯呑みを俺の目の前にぐいっと付き出す。お茶を注ぐとまた一気に飲んで付き出してくるので、こちらもまた注ぐ。妙にリズミカルなこの動きを何度が繰り返した後、急に銀ちゃんの動きがぴたりと止まった。
銀ちゃんは険しい顔をしていた。
「お茶、いかがです?」
“どうしてそんなに険しい顔をしてるんですか”とか“なんでこんな夜中にここへ来たんですか”とか、尋ねたいことは山程あった。が、銀ちゃんは誰かに詮索されるのが大っ嫌いだ。それを俺なんかがしてしまったら最後、強烈な殴りと蹴りが飛んでくるだろう。
本当は、俺の部屋に入ってきた時から銀ちゃんに元気がないのは分かっている。でもその理由なんて聞けないから、こうやって笑顔で傍にいることしか出来ない。
「…へらへら笑うな」
「…え?」
「笑うな、って言ってんだろうが!」
銀ちゃんは俺の胸ぐらを掴む。乱暴な動作なのに、近くで見た銀ちゃんの目はどこか暖かかった。
「すみません銀ちゃん!ほら俺、もう笑ってないっす!」
「…笑え」
「…は?」
「いつものようにへらへら笑いやがれ!」
“笑うな”と言ったり“笑え”と言ったり、理不尽なことこの上ない。俺の表情はどっちに従えばいいのか決めかねていると、銀ちゃんの腕が胸ぐらから離れ、背中に回ってきた。
「お前は…どんな時でもそうやって…笑ってりゃいいんだよ」
銀ちゃんに抱き締められていると気付いたのは、やけに弱気な声が俺の耳元で聞こえた時だった。
「…銀ちゃん」
一か八かで、俺は銀ちゃんに腕を伸ばし抱き締め返してみる。すると銀ちゃんは深い溜め息をつくだけで、暴れもせずじっとしていた。銀ちゃんが一秒でも早く元気になるように、腕に力を込めて抱き締め続けた。
俺はこの人が堪らなく好きなんだと実感した。
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拍手ありがとうございます!
銀ちゃんの恋観劇記念の期間限定拍手お礼です。
ヤスの部屋に土足で上がる銀ちゃんがあまりにも可愛かったのでためしに書いてみました(笑)
更新頑張ります!
またのお越しを心よりお待ちしております。
(2010/09/18〜10/26)
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