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シャングリラ編・その1
期間限定拍手・シャングリラ編(空+海)
あてなど無かった。
どんな言葉をもってしても言い表す事が出来ない感情だけが空を支配していた。両足が、少しでもシャングリラから遠ざかるように動き続ける。
強くなりたいと願ったあの日からずっと傍にいた人達を、皆失った。かけがえのない、血を分けたたった一人の存在も。最期に目の見えない彼が空の頬に触れた感触と、“空”と自分の名前を呼んだ小さな声が今も離れない。
どれくらいの時が経っただろう。ついに身体が悲鳴を上げ、空は砂の上に倒れた。これで全て終わるのだ。空はゆっくりと目を閉じた。
『…空』
誰かに呼ばれた気がした。目を開けると、空の前に一面の海が広がっていた。水門を開放した為に渇ききっていた大地に水が溢れ、豊かな青がどこまでも続く。
――ああ、俺を呼んだのはお前だったのか。
空は立ち上がり海の中へどんどんと足を進めようとしたが、途中で膝が崩れる。その衝撃は海に伝わって、舞い上がった水しぶきが空の全身を包んだ。
何故だか暖かかった。
「…お前はここにいるのか?」
手で掬って、何度も握り締めた。ぽたぽたとこぼれ落ちる水滴が涙に見えた。
「……カ、イ…」
この海と同じ意味を持つ者の名を、空は力無く呟いた。
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拍手ありがとうございます!
シャングリラ観劇記念に期間限定拍手お礼を書いてみました。
水門が開放された後、空がどっかに行っちゃった場面を観て、話を作りました。空と海がお気に入りです!
更新頑張ります!
またのお越しを心よりお待ちしております。
(2010/03/29〜05/02)
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