other(Fujimi+α)
Un sommeil confortable a vous
「4サイト合同・皆ジャンルがバラバラだけど友達だし、折角だから一つのお題で何かかいてみようよ」企画、略して「春の陣」
今回のお題「酒」
『Un sommeil confortable a vous』
「俺ぇ、飯田さんのとなりぃ〜!」
がやがやと皆で寝る準備を始めた中、さっきの銭湯でビールを一杯飲んだだけなのに、布団一式を抱えた五十嵐はふにゃふにゃと笑っていて充分に酔っ払っているようだ。
「おい、先輩…」
五十嵐は本当に俺の布団の横に敷きだした…のだが、ちょっと近くないか?距離感も掴めなくなる程酒がまわっているとは、さすがは学生。
布団が近いぞ、と言おうとしたが、
「電気消しますよ〜!おやすみなさい!」
の守村コン・マスの号令に仕方なく布団に入った。暫くして暗闇に目が慣れ、チラッと横を見ると、五十嵐はもうスースーと寝息をたてていた。
…へぇ、五十嵐ってうつ伏せで寝るのか。
と思いながら、俺も本格的に寝に入ることにした。明日は早いぞ!はー寒い。
それから冬場の寒さにうっすらと目が覚めたのは、何時くらいだったのだろう。俺は掛け布団にしっかりと埋まり直して寝返りをうった。
「…え?」
俺がマヌケな声を出してしまったのには、勿論理由がある。
寝返りをうった俺と密着しそうなくらい近くに、五十嵐が布団もろくに被っていない状態で寒そうに縮こまりながら寝ているからである。はぁ…こいつ寝相悪りぃな。起き上がって、五十嵐に布団をかけてやった。長いこと体から離れていたそれは冷たいらしく、まだ縮こまっている。
そんな様子は小さい子供みたいで、俺はもう少し先の未来の話になるであろう“父親”の気分になった。腕を伸ばして布団の上から五十嵐の背中に手を当て、親が子供の添い寝をする体勢をとった。すると五十嵐が無意識に寄ってきて、満足そうな表情を浮かべる。どうやら暖かいらしい。
ええと…五十嵐って21だったか。それにしてはずいぶんと…。こんなに大きい息子はいらねぇが、何だかほっとけないというか、面倒見てやらなきゃいかん、って思うんだよなあ。俺ってホントいい奴だ。
この時点では五十嵐に対する俺の心境は父親のようなものだと思ってた。少なくともこの時点では、だ。
そして朝の6時。目を覚ますと五十嵐は俺から離れ、元の位置に戻っていた。
しかし。
「よ。先輩おはようさん」
何にも覚えてないと思っていたのに、五十嵐は
「お、おはようございます!飯田さ、ん…」
と明らかに動揺していた。こりゃ面白い。俺は布団の上に小さくなって正座してる五十嵐に近付き、耳元で囁いた。
「昨日の夜は暖かかっただろ?」
ボンッと真っ赤になった五十嵐を見ながら、まだ少し暗い朝の光の中で俺は笑った。
(2010/04/15)
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