other(Fujimi+α)
Einsatz/3
市民センターの玄関前で一服していると、顔に「騙された」と書いてある五十嵐がとぼとぼと出てきた。予想より早かったことに驚きつつ、急いで携帯灰皿にタバコをしまう。
「さて先輩。『ふじみ』にでも行くか。」
「あの…飯田さん。」
すでに数歩前を歩き出していた俺を、五十嵐が呼び止める。
「なんだよ。」
「あの…」
柄になく言葉を濁している五十嵐は、振り返ってみるといつもよりちっちゃくなったように見える。…あ…れ、もしかして…
「お前、顔色悪くねぇ?」
近づいて五十嵐の顔を覗き込む。街灯に照らされたその顔は、やたらと白かった。
「あ、え、そうっすか!?そんなことないっす!!」
慌てた五十嵐は、「元気いっぱい」といったいつもの調子で隠そうとしているみたいだが、俺は余計心配になった。目の前でカラ元気な姿を見せつけられて、何にも思わない奴がいるとは考えられないがな。
もしかして、何かに悩んでるのか。それもこの様子だと簡単な問題ではなさそうだ。こりゃ、こっちも少しは真面目にやらないとな。いい大人が、学生をいじめるのはいかん。
「イガ、酒飲めそうか?」
「あー……すみません。ダメそうっす。」
「んじゃ作戦変更。コンビニで俺のビール買って、先輩、お前んちに行くぞ。」
「へっ…でえええ!?おおおお俺のアパートっすか!?」
「あ?部屋が汚くても俺は気にしねぇぞ。居酒屋で大泣きされる方がよっぽど困る。」
「…なっ…」
何か言いかけて黙りこんだ五十嵐を、俺は見てみぬ振りをして歩き出す。
「おい先輩。道案内。お前んち、行ったことねえんだからよ。」
本当はこのまま帰すのが一番良かったのかもしれないが、この日は何故だか「こいつを独りにしてはいけない」って強く思ってた。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
無料HPエムペ!