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main(Takarazuka)
望郷歌/3





サルメとサダルの舞はまるで天女が舞っているかのような美しさで、皆息をのんだ。酒を呑むのも、隣の者と語らうのも忘れ、ただただ圧倒される。オウスも例外では無かった。
しかし、オウスの興味は一人の舞手に向けられていた。サダルからどうしても目が離せない。サダルはオウスと背丈はほぼ同じだが、男性にしては少し華奢な体つきをしていた。その細い指先からつま先まで優雅に形作られ、花びらが風によってふわりと散る、儚げで美しい姿。表情は先程までの堅いものではなく、神秘的で切ないものだった。



サダルはオウスの視線に気が付いた。普段舞っている時は何か別の力が自分を動かしている不思議な気持ちになり、周りの光景が見え辛くなるはずなのに、オウスが自分を見ている感覚が身体に纏わりつく。舞いながらオウスの目を探し、サダルはちらりと視線を合わせた。やはりオウスはサダルだけを追いかけていた。それほどまでに舞を気に入ってくれた、ということだろうか。サダルは喜びの意を込めてオウスに微笑んだ。するとオウスは困惑した様子で顔を反らしてしまい、舞が終わるまでこちらを見ようとしなかった。


人々の感嘆の溜め息と割れんばかりの拍手の中、サダルは浮かない顔をしていた。会ったばかりだというのにオウスの気分を損ねるようなことをしてしまったらしい。興奮して詰め寄る人々に軽く礼をし、すり抜けながらオウスの元へ向かった。後はサルメに任せて、一刻も早くオウスに謝らねばならない。しかし、オウスは席にはもういなく、廊下から外へ出ようとする後ろ姿が見えた。サダルはその姿を逃すまいと必死で追った。







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あきゅろす。
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