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「ただいま!」
「わっ!?何だ月兄か、びっくりしたあ」
「悪い。急いで帰ってきたから」
「?‥なんかあるの」
「いや、ただ早く帰ろうと思っただけだよ」

お前に早く会いたかったなんてセリフ、死んでも言えない。…っつか、言おうと思わない。キャラじゃない。

「そうなの?」
「そうだよ」

クスリと笑う笑顔を向けられ、つられて笑顔になる。

―要…1%どころかほぼマイナスに近いぞ。

柚に想いを告げれば、満面な笑顔をよせてくれる信頼も兄としての場所もなくなる。
言わない方がマシだ。


香月は、玄関から一直線に自室へと向かった。ドアを開けるといつもの見慣れた風景が広がっていた。
モノトーンでまとめられた家具。唯一華やかな物と言えば、美大で作った油絵や白い石の固まりで彫られた彫刻くらい。
黒い机の右横のかすかなスペースにカバンを置き(っとゆうか放り投げ)、シングルのベッドに寝っ転がった。

…………コンコン

「ん?」
ドアがゆっくりとしたリズムで叩かれた。
「月兄、入っていい?」

いいよと言うと、ドアが開いてエプロン姿の柚が顔を出す。

「どした?悩み事か?」

「ううん!‥あの、後ででいいんだけど、買い物、一緒に行かない?」

少し照れたように‥それでいて微笑みを浮かべる聞き方‥

―断る理由なんてサラサラ見つかりません。‥ってか、可愛すぎます…

「いいよ」

「ホントっ?」

「うん」

「良かったあ♪今日、たくさん買うものあるから困ってたんだ!」

新妻のようにはしゃぐ柚

‥‥妄想はダメだ!速まるな俺!!


自身の思考と戦っているうちに柚は後でねっと言って、俺の部屋を出て行ってしまった。


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