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「月兄!」
耳元で甘ったるい声が何度も何度も俺を呼ぶ。
呼ばれるたびに、なんだか体が重くなる。
「もう、起きてよー!学校遅刻するよ?」

…がっこう?
………学校!?


「やべっ!!」
学校という名の単語が俺の脳内を駆け巡り、俺は勢い良くまぶたを開けた。

「あっ、起きた」
目の前には、俺の体を跨いでうつ伏せ体勢になっている弟、柚の姿が。

「もう。朝ご飯作ったから早く食べて」
お互いの口と口がぶつかりそうな距離で、柚は俺を見る。

「……俺は目の前のを早く食べたい」
ぽそりと柚に聞こえないように独り言を呟いた。

「何か言った?」
「何でもないよ」
柚を抱きかかえるようにして上体を起こした。騎乗位の体勢になってしまい、慌てて柚を離し、顔を背いた。

「どうかしたの?」
顔を背けた俺を心配した柚は覗きこもうとする。
「いや‥本当に何でもないよ。ちょっと眠いだけだよ」
そう言って、柚の頬に、触れたかわからない曖昧なキスをする。
それから柚の両脇に俺の両腕を差し込み、背中に手を回す。
「なっ…ちょっ…と…えっ?!」

手に力をこめる。

「兄さん?…///」
目の前には、恥ずかしそうで不安げな柚の顔。

―このまま押し倒してしまおうか

そんな欲望が、俺をふらつかせる。

ダメだ。俺はそんな事は、出来ない。
出来る資格がない。

なぜなら‥兄だから
柚が弟だから
俺達は兄弟だから…

‥の、前に、柚は俺のことを男として見てないだろう。

「…兄さん?」
柚の背中にギュッと力をこめ、体を持ち上げ、俺の膝から下ろし、ベッドのふちに座らせた。

「?」
「柚があんまり可愛いから、ちょっとからかっただけ。‥メシ、食お?」

ボーっと俺を見つめる、柚に向かって微笑み、ベッドから下りた。

「もう、からかわないでよ!兄さんがやると冗談に見えないんだから!!」
頬を膨らませた柚が俺の左腕に抱きつく。
…冗談?

だったらいいね。

この想い全て

冗談だったなら

兄弟として暮らしていけたのかもしれない

……好きだよ、柚

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