7
幻覚かな…
地獄絵図が見えるよ☆
柿口教授の罰則「デッサン100枚の刑」は要と俺以外の油絵科の生徒を昼抜きという瀕死状態に追い込んだ。
「香月、これ美味しいな★」
昼時、食堂で要はご機嫌だった。
好物だというオムライスを口いっぱいに頬張る。
「要、もっとゆっくり食べないと喉詰まらせるだろ」
「ふぇいきふぇいき!(平気平気!)―――っ!!!」
「ほら詰まった。‥ったく」
俺は隣に座ってる要の顔を覗きながら、彼の背中をさする。
その光景を見た、女生徒達が騒ぎだす。
この香月と要の絡み合い(?)、女生徒達の中ではこの光景が目の保養とされていることを香月自身、知るよしもなかった。
「見た!?今の!」
「見た見た!ヤバいよねー!!」
自分達のことを話題にされてることに気づかず、香月はのうのうと要を落ち着かせる。
「はあ〜」
「大丈夫か?」
「うん。ありがとう香月」
要のニコッと笑うさまは、柚とは違うが、可愛らしいと思う。
おそらく、顔が綺麗だからだろう‥
「…ところでさ」
不意に要が口を開く。
「ん?」
「香月がいつも食べてるその弁当って、自分で作ってるの?」
「俺が作ってるように見えるか」
「見えなくもない」
「‥俺はそこまで器用じゃない。これは同居人に作ってもらってるやつ」
「同居人?」
「そう」
「男?女??」
「男」
「俺知らないんだけど」
「だろうな」
「そっ…か……って、親友の俺には見せてくれないのかあぁぁぁぁぁ!」
…発狂するほど見たいのか?
「そんな見たいもんか?」
「見たいに決まってるだろ!」
「ふーん」
「関心して終わるな!!」
ツッコミ的な口調で、要は言葉を連ねる。
「会わせろー!」
「それはヤダ」
「何でー?」
「何でって…」
―好きな人で、それも弟だからだよ…
「その子人見知りだから」
「大丈夫だって、人見知りくらい!俺を誰だと思ってる」
「一ノ宮 要。お前は初対面にもテンション高すぎなんだよ」
柚がドン引きするのも目に見えてる。人見知りというのは間違ってないから。して、こいつだと柚が襲われかねない。
「いーじゃん。慣れれば平気なもんだろ?」
「俺はな。お前が入学式早々から、毎日つきまってくれてるお陰で」
「楽しいスクールライフだろ?」
「ご丁寧にどうも。俺はお前がいるから油絵科を離れらんねぇんだろうな」
「何気に爆弾発言だね(笑)」
「あっ、違った。柿口教授がいるからだ」
「…俺は爺さんに負けるのか」
要は、ブルーなオーラを放ちながら前のめりでうなだれた。
その仕草が友人として、あまりにも微笑ましい光景だったので笑ってしまう。
すると彼はさらにいじけた。
「香月にはきっと、爺さんの遺伝子が混ざってるんだ…」
「俺は柿口教授の息子じゃねぇし」
「じゃあ柿口ウィルス感染者だ!!」
「ブッ!柿口ウィルスって…(笑)」
「そんな笑うな!」
「わっ悪い!‥ふっっ!(笑)」
「///…香月のせいで(?)恥ずくなった!」
「俺のせいか?!」
「お前のせいだ!!」
俺に背中を向け、また、うなだれ状態でいじけた。
俺は、要の背中を人差し指でつつく…
「要」
「何だよ!」
「悪かったって」
「許さんっ!」
拗ねた声をあげる。
「要」
「………」
「柿口教授より、他のヤツらより、お前が大事だよ」
「……許す///」
「ありがと♪」
要をからかうのは史上最高に楽しい…そう思ってニコニコの香月はある意味悪魔なのかもしれない。
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