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朝食
【数日後】


  朝・自室───



「くかー……こぉー………」


「……きて……てってば………」


「ん〜……むにゃ…もう飲みきれない…ってのか……」


「もう………んの、ジン……」


「…んぅう……いんや、俺はまだいけ…るぞ………」


「んも〜、何の夢見てるの?ジン」


寝言ばかり吐くジンに溜め息をつくカノンノ。


「じゃあ───」


手段を変えるのか、カノンノはジンのそばに寄る。

そして───


「んが……よぉし…次はウイスキーコーク持って来い……ウイスキー抜きで……」


  ギュゥウウゥウ───


「痛ててでデデデ!!?」

突如耳を引っ張られ、痛みで目が覚める。


「あっ、ごめん。痛かった?」


ぱっ と手が放され、俺の耳は痛みから解放される。


「あ、なんだ。カノンノか……びっくりした」

「ごめんね。でもジン今日もなかなか起きなかったから」


バンエルティア号に来て以来、毎朝カノンノに起こされている。

そして今日もほっぺたをむにむにされると思って期待していたのだが、今日は違ったようだ。

まあバッチリ目覚められたからよしとしよう。


とりあえず───


「おはよう、カノンノ」

「うん、おはよう ジン」



       ※



「あれ?カノンノまだ朝メシ食ってないのか?」

着替えを終え、二人で食堂に向かって歩いていく。

いつもは俺が起きる頃にはカノンノは朝食を終えているのだが……


「うん、今日は先にジンを起こそうと思って」


そういえばいつも起こされている時間よりも今日は早い。

しかし、何でまた?


「だって、ジンいつも朝ご飯食べるの最後だからもう少し早く起こしてあげなさい ってパニールがね」


なるほど、そういえば汁物が出てる時は温め直してもらってたな。

そう考えると早く起きて冷めないうちに食べるのがいいと判断したのだろう。


「えへへ、ジンと一緒に朝ご飯だ〜♪」

と、急にうきうきしだすカノンノ。


「ん?やけに嬉しそうだな?」

「うん、ジンと一緒にご飯食べるの初めてだもん」

「…? ……そうだな」

それだけらしいが、俺には何が嬉しいのかさっぱりわからなかった。



       ※



  食堂───


「おはようパニール」

「おはようカノンノ。あら、ジンさんもご一緒ですか」

「うん、パニールに言われた通り早く起こしてきたよ」

「まあ、それはありがたいわねぇ。
 ささ、もう出来てるからお食べになって」


テーブルの上には既にハムエッグやトースト、サラダなど朝食らしい朝食が並べられていた。


「「いただきまーす」」


俺達二人は揃って席に座り合掌する。



    *



「あれ?ジン サラダ食べないの?」

「えっ?」


見ると他の品には手をつけているのに生野菜のサラダには全く手をつけていないのに気付く。

……そういえば、不思議と食べる気が沸いてこない。


「まあ、お野菜は嫌いですか?」

「いや、そんなことはない。今までだってカレーとかの野菜は普通に食えたし……」

「ひょっとしたら生野菜が駄目なのかもね」

「多分な」


この感覚は恐らく、俺は生野菜が『嫌い』なんだろう。

曖昧な言い方だが、何分記憶が(以下略)


「でも、好き嫌いはよくないよ?残すともったいないし」

「そうだな……」


確かに、せっかく作ってくれた料理を残すなんてパニールに申し訳ない。

「いいのよカノンノ、無理させなくても」

「でも………あ、そうだ!」


何か閃いた様子のカノンノ。


すると自分のフォークで俺のサラダのプチトマトを刺し───


「はい、あ〜ん


───と、そのフォークを俺に向ける。



「………ん?」


えぇと、何してるんすかカノンノさん?



「こうすれば食べられるかな〜って」


ああなるほど、小さい子にやるようにすれば食べられるんじゃないかと。

まあ悪くはないね。そうすれば効果はあるかもしれないが………


「……パニールが見てるぞ?」


チラッと見ると「あらあら」といった表情で俺達を見守るパニールの姿が。



「それがどうかしたの?」


気にしてない? この娘は気にしてないと申すか?

すごいな、なかなかこういうのは多少なりとも恥ずかしく思うものと思っているが……



「ほら、いいからジン あ〜んして


甘い声で俺の目を見つめながらフォークを差し出すカノンノ。



ぐは、これはやられた。悩殺。





  パクッ


モグモグモグ………



うっ、苦い………けれど食えないほどではなかった。


「あっ、すごい!ちゃんと食べたね」

「あ、ああ………」


なんだか子ども扱いされてるみたいだ………ていうかもはや子ども扱いされているよな。



「じゃあ…もっと食べれるかな……?」


と今度はレタスを突き刺したフォークを構えているカノンノ。


「いいよ、今度は自分で食べるかr」


「はい、あ〜ん



またですか!?

もういいですよ俺食えますよ!?



「…………えへへ」


何も言わず上目遣いでカノンノは俺を見つめ続ける。



がは、これまたやられた。二発目。






  パクッ


シャキシャキと新鮮なレタスのみずみずしい歯ごたえが口いっぱいに広がる。


……が、苦い。

そろそろお手上げかな………



「ジン、次はキュウリだよ はい、あ〜ん




もう止めてぇ!!(泣)





…………………

……………

………

……







「「ごちそうさま」」



結局、全部カノンノの「あ〜ん」でサラダ一皿を平らげた。


「えへへ……」

まあカノンノもよくわからないがご満悦のようだし、俺も満更じゃなかったし、パニールの作ってくれたご飯を残すことがなかったから まあ良しとしよう。




    *



「さっ、ジン 早速依頼を請けに行こ」

「おう」



このギルド『アドリビトム』はグランマニエ皇国軍大佐ジェイドの御墨付きである為、連日依頼が殺到している。


俺達は最近は朝から駆り出され忙しい日々を送っているのである。



まあしかし、これがギルドのあるべき姿なんだろうがな。


よし、今日も頑張るか────





【光り輝く物語】
第二章 〜アドリビトム〜






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