書物
*on the last day(浦一)
それはいつもと変わらぬ彼の休日。いつものように、彼がアタシに会いに来る。
特に何をするでもなく、ただ各々の方法で時間を潰す。
たったそれだけの為に、今日も彼はやって来る。
*****
「……浦原さん……」
「はい?なんでしょうか」
「その………やっぱなんでもない」
こんな意味のないやり取りを一体何度繰り返しているのだろうか。
飲み込んだままの言葉も、彼の顔を見れば、いや、声を聞くだけでわかる。
アタシにはなんでもお見通し。
「一護……」
「へ……?」
部屋に短く、大きな音が鳴り響く。
少しだけ……罪悪感が沸くが、今はそんな事に構っていられる程の余裕はない。
何せ、今彼はアタシの体の下へと敷かれているのだから。
「な、に……?」
まるで自分に何が起きているのかわからないと、いう風に瞳を見開いて。
彼の肩に置いた指先から、震えが伝わってくる。
「ちょっ……まっ……ん……!!」
そこは初めて触れる場所。
ずっと、触れたいと願って止まなかった場所。
「やめ…っ……んぅ…」
角度を変え、何度も、何度も深くくちづける。
息もできないくらいに、何度も、何度も。
「一護さん」
押さえつけた腕もそのままに耳元で、ささやく。
「嫌だったら殴ってでも、止めてくださいね?」
そのまま、遮る言葉も聞こえないフリをして。
「ん……ふぅ……っ」
「気持ちいいの、一護?」
彼の身を纏っていた衣服は乱れ、あらわになった白い肌に触れる。
だらしなく開かれたままの口からはとめどなく甘い息が漏れる。
必死に顔を背け、腰をひねり、けれども決して声を出す事はない。
まったく、貴方はなんて強情な人なんでしょうか。
「一護、力、抜いて?」
「んなの……無理に、決まってん、だろ……っ」
「……アタシ、嫌なら殴れって言いましたよね?」
今すぐにでも咎めてくれて構わないのに。
彼がそれを出来ない事を知っていた。知っていたからこそ、アタシはそこに付け込んだ。
「浦、原……こんなの……」
今更そんな表情見せたって、やめてあげない。
深く、そのままアタシに溺れてしまえばいい。
二度と浮き上がらぬように、深く、深く。
そんな欲がアタシを支配してそして、渦巻いていく。
「一護、我慢してね?」
「っ、あ………っ!!」
宙を彷徨う、いきどころを失った腕を取り、強引に引き寄せて。
「声、全部聞かせて?」
そして、アタシだけを感じて。
夢中で首にしがみつく彼にはもう、何も見えてはいない。
アタシ以外を映さない瞳を、心を、身体を……このまま壊してしまいたい。
「一護……っ」
「…は…ぁ……っ」
「一護、愛してる」
「…うら……はら……」
額に汗でへばりついた髪をすくい、そっと撫でる。
「一護さん」
うっすらと涙の痕を残し、瞳を閉じた彼にはもうアタシの声は届かない。
「アタシだけを見て」
これで、やっと貴方はアタシだけのもの。
*****
目が覚めたあとは幸せな日々が待っているんです。
なのに何故こんな方向性になってしまったのか。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
無料HPエムペ!