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5月拍手「鈴蘭」(天蓬)



「おや、これは…」


軍議から帰って来ると、部屋に溢れていたはずの本が綺麗に整頓されていた。

別にあの状態の部屋でも自分は問題ないのだけれど、やはり片付いていた方が気持ちはいい。


「捲簾…じゃないですね、今日は」

いつも部屋を片付けてくれるのはもっぱら彼なのだが、今日は違うということが一目で分かった。



『あ、元帥、お帰りなさい。部屋、散らかっていたので掃除させていただきました』


そう、今自分の後ろから声をかけた彼女がこの部屋を掃除したのだ。


「えぇ、一目で分かりましたよ。サヤと捲簾じゃ片付け方が違いますしね」

『大将、上手ですからね…比べると少し見劣りしますが…』

「違いますよ。そこの本棚で一発です。僕の読みたい本が一番分かりやすい所に入っているのが貴女ですから」

『そうですか?私が読みたいものを並べてしまっている気がするのですが…』

「そんな事ないですよ。この間なんか、読みかけの本を廃品回収に出されそうになったくらいですからね」


そう、あの時は本当に危なかった。貴重な資料が灰になってしまう所だったのだ。


『あー…大将が必死に回収車を追い掛けてたやつですね』

「まぁ何とか無事でしたけど…ところでどうしたんですか?その花」

『あぁ、これですか?鈴蘭です。お庭に咲いたので、元帥の机に飾ろうと思って…いいですか?』


一輪挿しに飾られたその花は、小さいながらも凛としている印象があった。

「えぇ、お願いします…まさか、この部屋に花が飾られる日が来るなんて思いもしませんでしたよ」

『ふふ、綺麗ですよね。それにこの花、どうしても、咲いたら元帥に差し上げたかったので』

「何でですか?」

『元帥には、幸せでいて欲しいから…ですかね』





「鈴蘭」 花言葉は幸福が訪れる




ずっとずっと、貴方が幸福でありますように。














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