6月拍手「クチナシ」(捲簾&天蓬)
『捲簾、天蓬』
窓からの日射しが部屋を明るく照らす。風も爽やかに吹きわたっていて、散歩をして帰ってきた所だった。
「なんだ」
「どうしました?」
窓辺で煙草の紫煙を燻らせていた二人は穏やかな様子で1人分のスペースを空けてくれた。
その場所が、今の私の定位置。
『これ、貰ったからあげる』
差し出したのは、甘い香りのする白い花束。
「なんつー花?」
『知らない。花屋のオヤジがくれた』
「また貴方は…せめて花屋さんくらい、おじさんって言いましょうよ」
『そういうもん?』
「ま、たまにはお嬢さんらしく振る舞ってみろってことじゃね?」
『花屋のおじ様が下さったの…どう?』
見れば二人は反対方向を向いて肩を振るわせている…失礼な。
「ほんっっとお前、口が悪いのよくここまで直したな」
「いやぁ…まさかおじ様なんて単語を貴女が知ってるとは思いませんでしたよ」
「感情が一切入ってないあたりが逆にスゲーよ」
「棒読みを越えた棒読みですね」
そして今度はこれまた二人揃って私の頭を撫でてくる。今の私のポジションはこんな感じ。
『…丸くなったなぁ』
勝手に回想話をし始める二人に聞こえないように呟く。
大変だけど、毎日が、楽しい。
昔の自分が今の私を見たら、なんと言うだろう。
…でも、なんと言われようが構わない。
生きることが苦しくならない今が、私は好きだから。
私に居場所を与えてくれた、かけがえのない友人に。
白いはなを贈ろう。
「クチナシ」 花言葉は 楽しい日々
貴方たちのお陰だから。
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