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見つめる視線のその先を(捲簾)



『あ、捲簾が眼鏡掛けてる…老眼鏡?』

剣の稽古が終わってから彼の部屋にやってきた私は、珍しいものを発見した。

「言うと思ったけどな、それ。つーか、何故俺はお前の中でジジイキャラ確定なんだ」

『落ち着くから?大丈夫、加齢臭はまだしてない』

「何気にひでーな…」



何処でも売っているような黒フレームの眼鏡を掛けた捲簾は、喋りながらも書類を次々と片付けてゆく。
滅多に掛けない眼鏡の効果か、その姿はいつもと違うようにも見えた。


『意外とそれ、似合ってるよ。当社比1.3倍は頭良く見える』

「それはまた微妙な数値だな…」

『次回は是非、ノンフレームで。あと、銀色だったら尚いい』

「…なにお前、眼鏡好き?」
『いえす』



黒髪に眼鏡って正義だよね。



勝手知ったる捲簾の部屋なのでお茶を入れながら呟くと捲簾も乗ってきた。


「じゃああれか、天蓬なんてまさに?」

『いや、天蓬の場合はないと不自然』

「そうかぁ?」

『つーか、眼鏡無いときって私達が任務中でピンチの時ばっかだから。天蓬の怖い顔しか浮かばない。あれコワイ、マジでコワイ』

「あー、返り血顔に付いてたりなー他の奴らもおんなじはずなんだが。何だかなー」

『本当だよ…だから天蓬の眼鏡は怖さ制御の為のものです』

「なるほどな…だから隊員が天蓬にコンタクト薦めるの全力で阻止してたのか」



前ぶれなく投下された一言に危うくお茶を吹き出しそうになった。




『…なんで知ってんの?』

「そりゃー、お前に実力行使という説得をされた奴らが俺の所に泣きついてきて…」

『…シメてくる』



心当たりはあるので残ったお茶を一気に飲み干し、訓練用の木刀を取った。
トップシークレットを簡単にばらした罪は重いぞ。



「待て待て待て、サヤ…天蓬にゃ言ってねーから」

『本当に?』


部屋を出ていこうとする私を慌てて捲簾が止めた。
なんか眼鏡のせいでばらした奴への怒りも収まってきた気がする。


「ああ」

『よかった…』

「つーかそんなにバレたらヤバいのかよ?」

『そりゃ実力行使の前に言った様々な言い訳が…』

「例えば?」

『天蓬の眼鏡は初恋の彼女の眼鏡をコッソリ奪ってきたもの、とか』

「ストーカーか。つかよく割ってるだろアレ」

『そしたらなんか広がっちゃって…どうしよう大将』

「…奴はまだ会議だ。急いで逃亡手段を考えればまだ間に合うぞ」

『逃亡するしかないのか…』


勇気を出して助けを求めたのにあっさり見捨てられた。
眼鏡のお陰でいつもより頼りになりそうに見えたが見えただけだったようだ。


「捕まれば拷問は免れないな」

『徹夜で書類整理ぐらい押し付けられそうだね』

「徹夜と言わず1週間位なんてどうですか?」

「そりゃ無茶だろ……」

『うん、無茶……?』




………………………




この日、人生で初めて「空気は凍る」ことを知った。

天蓬に捕まって書類整理(という名の拷問)をさせられるまでの逃亡劇(捲簾巻き込み)はまた今度。












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捲簾が眼鏡したらカッコいいよね。
という話が書きたかった…はずorz


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あきゅろす。
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