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廊下側最前列

廊下側の一番最前列。
それがワタシの席だった。
席替えはくじ引きで決めたから自分の意志でここに座っているわけではない。

授業中はいつもぼんやりと肘をついて、開かれたままの教室の扉や窓から廊下を眺めていた。

どの時間でもというわけではない、いつも決まった時間の授業中だけイオンは少し扉や窓を開けている。そのことには誰も特に意識していないようで、閉めろと言われることも閉めに来る人もいなかった。


今日までは。



「イオンちゃん。私の授業がつまらないかしら?」



そう言い、イオンの席の前に立ったのは理事長兼、古典担当の侑子先生だった。


いつもこの時間は古典ではない、たまたまこの時間の先生が急な休みで時間割が変更されたのだ。


「すみません。ボーッとしてしまって。」

「気を付けなさい。それと、放課後、理事長室に来ること。」


侑子先生は怪しげな笑みを浮かべ、また授業へと戻る。
理事長室に呼び出しなんて絶対ろくなことはない。
小狼や四月一日達と一緒に過ごすようになってわかった。
しかも、今のやり取りの間に廊下を眺めている理由が終わってしまっていた。


注意されてるとこ見られたかな?


侑子先生に注意され、そちらに意識が集中してしまい、廊下を誰が通ったか覚えてはいないが、毎週決まった時間なのでたぶん通ったのだろう。


あの人のことだから笑いながら見たんだろうな。

いつもヘラヘラとしていて怒ったとこなんて見たことがない。

イオンが廊下を眺めている理由、それは毎週決まった時間に化学室に次の授業の準備に向かうファイが通るからだ。

「堀鐔学園を楽しくしてあげるよ」とファイが言い出してから数ヶ月。
あのあと、同じクラスのサクラやひまわりを紹介されて仲良くなった。
サクラの彼氏の小狼や四月一日、百目鬼とも仲良くなって、一緒にお昼を食べたりした。
ここのグループと仲良くなると先生である黒鋼や侑子との接点も増え、学園生活は一辺したかのように賑やかになった。

この学校で楽しく過ごすつもりなどなかったのに、一度知ってしまった思いをもう取り除くことはできない。
そして、もう一つ知ってしまった感情。いけないことかもしれないが自分の為にいろいろとしてくれたファイに恋愛感情を抱いてしまった。
先生と生徒の間柄、叶わない思いでもイオンはファイと話して姿を見るだけでも幸せなのだ。



廊下側最前列


それは、ワタシの特等席。

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あきゅろす。
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