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金魚草が動揺する時
椿と牡丹の出会い

徐々にそれは消えてゆく。

本当にゆっくりと、ゆっくりと感覚から消えてゆく。
そして最後は消滅するのみ。
誰に見届けられるでもなく、ひっそりと。
それが、忘れられた者の定めであり逃れようのない現実。


自分も例外なくそうなるだろうと思っていた。
思っていただけでなく、本当になるはずだったのだ。


「あなたはだれ?」


あの声が聞こえるまでは


「!?」


少女が声をかけると、消えそうだった身体が元のように実体化した。


「な……」

「?」

「君……、僕が見えるのか?」

「きおくのだんぺん、だよね?おばあちゃんが教えてくれた」

「………」


彼はとても驚いた顔をしていた。
少女は6、7歳くらいで、黒髪だった。
だが瞳の色が赤とも紫ともとれないような赤紫色で、光の加減によっては色々な色に見える。


「わたし、昔からそういうのよく見えるの」

「…そうやっていくつの、忘れられた者の消滅を止めた?」


彼はそう少女に問う。
そんな彼の姿は黒髪緋眼で、どこの学校か分からないが制服を着ていた。
しかもその上に真っ黒のローブまで着ており、とても浮いた格好だった。


「…はじめて」

「はじめて?」

「おばあさまがダメだって言ったから。行かせてあげなさいって」

「じゃあ、なぜ僕を?」

「……なんだか、放っておけなかったから」

「…忘れ去られた記憶の断片は、ある程度時間がたつと消滅する。
 僕はその期間が長かったけど。でも、誰かが存在を認識すると消滅しなくなる」

「?」

「つまり、僕はもう消滅できないってわけ」


彼は悲しそうに、それでいて嬉しそうにそう言った。


「めいわく……だった?」


幼い少女の言葉とは思えないような言葉が、少女から発せられた。
そんな言葉に、彼は少し口角をあげる。

「迷惑ではないよ。でも、行くところがない」


その言葉に、少女は少し笑顔になって言った。


「それならぜひ、わたしのいえにきて!きっと、おばあさまもよろこんでくれる!!」

「え……?」

「……やっぱり、ダメ?」


なぜ、こんな赤の他人である自分に必死になれるのか、彼は不思議でしかたがなかった。
でも、そんな少女のことを好きになれそうな気がした。


「……いいよ」

「ほんとう!?」


少女は顔をこれでもかというほど、綻ばせた。そして、自己紹介をする。


「わたしはフィオル!あなたは?」

「トム・マールヴォロ・リドルだ」

「リドル!すてきなファミリーネームね!」

「?」

「よろしくね!リドル!!」


少女の発言に違和感を覚えるも、彼も少女に頷いた。






―椿と牡丹の出会い―

 
(そして牡丹は確信する)





椿=愛らしさ・牡丹=王者の風格


(リドルの口調が分からん…)




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あきゅろす。
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