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金魚草が動揺する時
二人の天敵は獅子寮に在り
「アクシオ、杖よ来たれ!」
ふいにそんな声が聞こえた。
呪文のような言葉だが聞き覚えがなく、まだ習ってない魔法のようだった。
すると、セブルスの足元に落ちていた杖が空中を横切った。
杖の行く先に居たのは、一人のスリザリン生。その手の中にはセブルスの杖が納まっていた。
「なにしてるの、セブルス」
人を馬鹿にしたような笑みを浮かべると、彼女――フィオルはそう言った。
なぜ彼女がここにいるのか、セブルスはそう疑問を持った。
いつものように、フィオルは今日も大広間に来ないのだとばかり思っていたのだ。
なのに彼女はそこにいた。
先程の魔法は、呼び寄せ呪文だったのだろうとセブルスは考えた。
なぜその魔法を知ってるのかという疑問は、全く持って生まれなかった。
彼女がどういう者なのかということを、セブルスは分かっているつもりなのだから。
フィオルは手の中の杖を、セブルスへと放った。それを慌てて受け止める。
「あぁ、ごめん。何してるのか、っていう質問は愚問だった」
「……僕も愚答するところだったな」
フィオルはセブルスの所まで、カツカツと足音をわざと鳴らして歩み寄る。
杖はすでにローブの中だ。
「へぇ、スニベルスの彼女かい?」
セブルスに杖を向けていた内の一人、ジェームズ・ポッターがそう言う。
人を小馬鹿にしたような笑みを、顔面に貼り付けている。顔は中々に良い方だ。
隣のシリウス・ブラックは、文句の付け所の無い程に完璧なのだが。
だがこの二人がなぜ、セブルスに絡んでいるのかがいまいちよく分からない点だった。
「スニベルスってセブルスのこと?それなら御生憎様。私は彼の恋人じゃないんで。
それと、私的にはスニベリスじゃなくて、スニベリーの方がいいわ。ね?セブルス?」
「僕に振るな」
「じゃあ、なんで助けたんだ?」
「それこそ愚問ね。それじゃあ逆に問うけど、あなたはジェームズ・ポッターがこんな状況になったら助けない?
あなたたちの関係からしてみれば、私達なんて薄っぺらい関係でしかないかもしれないけれど」
それを聞いて目の前の二人は、顔を見合わせた。
そしてにやりと、面白いことを聞いたかのように笑った。フィオルをまじまじと見てくる。
「ジェームズはそんなへましないが、確かにお前の言うことにも一理ある」
「君にも友達がいたとは知らなかったよ」
「………」
二人は杖を下ろしてそう言った。
セブルスは何を言うでもなく黙ったままだ。
「知ってると思うけど、僕はジェームズ・ポッター。隣はシリウス・ブラック。君は?」
彼は唐突に自己紹介をし、隣のシリウス・ブラックの名前も言った。
そのとき彼が、ブラックと言ったときに顔を顰めたのを見逃さなかった。
そしてこちらにも自己紹介を求めてきたので、逆らうでもなく自分の名前を言う。
「フィオル・ミュステリア」
「…ミュステリア?」
そう簡潔に自己紹介をすると、ブラックが物凄い形相でそう聞き返した。
それだけで予想がついた。彼は純血の家を嫌悪しているのだと。
その証拠に彼も純血であるにも関わらず、グリフィンドールに組み分けされている。
きっと、自分の家であるブラックも憎んでいるのではないだろうか。
「そう、私はミュステリアの「フィオル!!」
ブラックの問いに肯定しようとすると、横からある声が遮った。
その声には聞き覚えがある。その声を聞いた瞬間に、逃げ出したくなる。
今までずっとその声の持ち主から逃げ続けていたのだ。フィオルは恐る恐る、声のした方を向いた。
「………げ」
「げ、じゃねぇよ!今まで散々逃げやがって!!今日という今日は許さないからな!」
「いや別に、許すもなにも私はなにもしてな……」
「うるっさいな!そんなことはどうでもいいんだよ!!」
現れたのはフィオルの天敵。
従兄弟のリミックス・フォーリンガルだ。
今まではリミックスが視界の端に写るとすぐに全速力で逃げ、グリフィンドールとの合同授業は極力避けるように無断欠席をしていた。
実は大広間へあまり行かないのも、リミックスと会いたくないというのも理由の一つだった。
「あれリミックスって、彼女と知り合い?」
「こいつは俺の従姉妹で、最悪な野郎だ」
「うわー……、だからもう会いたくなかったのにさー……」
「痛い従兄弟だな」
「全くその通り」
リミックスはジェームズに、フィオルの自分の中の悪評をあることないこと言い続けている。
その言葉の数々に、よくこれほどまでに悪口が思いつくなと、フィオルは呆れを通りこして感心していた。
だが段々と頭痛が増していき、耳が痛くなってきたが。
「しかもお前、フィオル!いつもいつも、グリフィンドールとの合同授業だけ休みやがって!!」
「あぁ、なるほど。それで全然、彼女のことを見たことがなかったわけだ」
「ああ゛あああぁぁぁぁ!もう、煩い!!」
色々な何かがフィオルの頭の中で、ぶちりと切れる音がした。
頭痛で頭が割れるかと思っていたときだった。
「分かったわよ!グリフィンドールとの合同授業も出てやる!!それでいいんでしょ!?」
そうフィオルは怒鳴り散らすと、セブルスの腕を掴んで人の群れの中から出た。
その後は真っ直ぐに寮へと向かう。
行き場のない苛立ちが、身体の中で燻っていた。
「あぁ、もうほんとにリミックスの奴!今度会ったとき、魔法でぎったんぎったんにしてやろ。
そうじゃないと何か色々とヤバイ。あぁほんとに、あれはもう少しでアバダしそうになった……」
フィオルはぶつぶつとそう言った内容を呪いのように呟いていた。
セブルスはそんなフィオルに腕を掴まれ、引き摺られるようにして後ろを歩いていた。
「あいつは、誰だ」
「へ?あいつって?」
フィオルはセブルスに話しかけられ、やっと我に返ったようだった。
セブルスが言うあいつとは、リミックスのことのようだ。
「従兄弟だとか言っていた……」
「あぁ……。…あいつはリミックス・フォーリンガル」
フィオルはげんなりとした顔で、その名前を言うのも鬱陶しいとでも言うようにそう吐き捨てた。
フィオルのことをよく思っていないことは確かなのに、いつもいつも絡んでくる。
嫌いなら嫌いで、無視しておけばいいものを。
「私の父の姉と、半純血の魔法使いとの間の子。血が3/4しか純血じゃないから後継者にはなれないらしい。
まぁミュステリアじゃないわけだから、当然と言えば当然なんだけど、それを恨んでるらしいわ」
「グリフィンドールなのか」
「……もうそれが、嫌で嫌で」
フィオルがグリフィンドールとの授業だけ欠席しているのを、セブルスは勿論のこと知っていた。
理由が分からなかったのだが、このことだとすれば納得がいった。
「……もうちょっとで、クリスマス休暇か…」
家から帰れということは聞かされていないので、フィオルは帰らないつもりだった。
それに、人が極端に減ったホグワーツを見てみたかったのだ。人が多いのはあまり好きではなかった。
……お願いだから、リミックスは帰ってくれますように。
―二人の天敵は獅子寮に在り―
(蛇の敵は獅子だということなのか)
(出したかったオリキャラが出せました!主人公の天敵!)
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