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金魚草が動揺する時
束縛から放たれる時
ホグワーツに入学して大分時がたった。もうすぐでクリスマス休暇だ。
成績は上々。
今はまだ、曽祖父達の言う通り大人しくしていた。
成績で一位になるようなこともしない。ただの、優等生止まり。
私の他に天才がいるのだ。二人。
グリフィンドール生で、一年生ながら校内でその名を知らない者はいないほどだ。
いやでも、全くその名を知らない人がいないというわけではない。現に私は知らない。
顔を見れば分かるかもしれないが、名前と顔が一致しないのだ。それに関わりもなければ、興味もない。
はずだった。
「……今日もいかないの?大広間」
「うーん……。だって一人だから行く意味ないし、かぼちゃジュースが嫌なんだもん」
「オレンジジュースは?」
「やだ」
今は朝であり、もう朝食の時間だった。
セブルスと一緒に食事をとらなくなってから、あまり大広間で食事を採っていない。
勿論セブルスとはこれまで通り、一緒に教室を移動したりしており変わりはない。
かぼちゃジュースがいやだとかいうのは、ただの口実だ。大広間まで行くのが面倒なだけだ。
それでは食事はどうしているのか。
食べないときもあるし、リドルに魔法で出してもらったり、気が向いたときは厨房まで行って作ってもらったり。
最後のは、大広間よりも厨房の方が遠いのによく行っている。なぜなら、私の好きなものを屋敷しもべ妖精が作ってくれるのだ。
もちろん飲み物も普通の水などがあり、もらっていったりしている。
一番良いのはリドルに出してもらうことだが、大抵の場合は拒否される。
「……今日は、行ってきなよ」
「なに?リドル、何か食べたい物でもあるの?」
「そんなわけないだろ」
「ですよね。じゃあ、なんで?」
「……行きたくないのなら、いいよ」
私は不思議に思った。今までは何も言わなかったリドルが、急にこんなことを言ってきたのだ。
何か大広間であるのだろうか。気になったが、行くのが面倒だ。それに、あまり空腹感もない。
私は何気なく時計を見た。
「あー……、もう朝食の時間終わってしまうけど」
「それは丁度良かった。早く大広間へ行ってきなよ」
「………」
私は渋々、重たい腰をベッドから持ち上げる。
行けと言ったにしては、リドルは行かないみたいだ。
それを指摘するとリドルに、フィオルが行くことに意味があるんだよ、と言い返された。
暖かい部屋から出るのはとても惜しかったけれど、興味も少なからずあったので、私は寮から出て行った。
もちろん、向かうのは大広間。
「いったい大広間で何があるっていうね」
大広間に着いたとき、丁度朝食が終わり、生徒達が大広間から出て行っているところだった。
人の群れがこちらへと向かってくる。上手くよけながら、大広間へと近づいた。
すると、大広間のすぐ近くで大きな人溜まりができているのを見つける。
その人溜まりの中心には、セブルスがいた。
「へ?セブルス?」
よく見えるようにと、その人溜まりの中に私も入っていった。
すると、セブルスと二人のグリフィンドール生が対峙していたのだ。
しかもその二人というのが、
「ジェームズ!シリウス!やっちまえっ!!」
「そうだそうだ!スリザリン生一人くらい、朝飯前だろ!!」
人混みの中から野次が飛ぶ。
スリザリン生というのは、きっとセブルスのことだ。そしてジェームズとシリウスというのが、あの二人らしかった。
その二人は、今有名なジェームズ・ポッターとシリウス・ブラックのことであり、その二人は天才らしかった。
二人は悪代官のような笑みを浮かべながら、杖をセブルスに向けている。
対するセブルスは杖も持たずに、二人を睨んでいる。
普通ならこんな騒ぎに突っ込んでいかない私だが、その相手がセブルスなのであれば違う話だ。
それにそろそろ、大人しくする期間を終了させてもいい頃ではないだろうか。
そう思いながらも、もう少し様子を見ることにした。なぜならなぜこのような状態になったのか、という経緯が分からないからだ。
「……また貴様達か。グリフィンドールはこういう能無しが多くて困る」
「対するスリザリンは、能無しがするようなこともできない臆病者ばっかだけどな」
その言葉に、周りで笑いが起きる。
見ると、この人だかりはグリフィンドール生ばかりだった。私がスリザリンだということは、まだ気づかれていないようだが。
そしてふとセブルスの足元を見てみると、セブルスの物らしき杖が転がっていた。
武装解除術でもかけられたのか。まだ一年生なので、習っていないはずなのだが。
まぁそれも、天才達には必要の無い疑問なのだろう。
「ほら、早く杖拾ったら?」
「間抜けな姿を晒してもいいんならな」
そこでまた笑い。なんとなく、今の状況が分かってきた。
杖を取るためには屈まなければいけないことになる。それは相手から攻撃されても避けられない。
それどころか、とても不恰好な姿となる。それがセブルスにとって耐えられ難い屈辱だということが分かっていてやっているのだ。
呼び寄せ呪文はまだ習っていない上に、杖がないとできない。
「…これは、私の出番ね」
私は小さく呟くと、小さく笑いながら人だかりの中心へと向かった。
呼び寄せ呪文を唱えながら。
―束縛から放たれる時―
(さぁ、自由にしましょうか)
(アクシオ!か、Accio!どっちがいいでしょうか。。。どうでもいいですねw)
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