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蒼と赤と白

どうしてこんな大事な日に…


蒼と赤と白


昨日の夜0時、ピッタリにメールを送ったときには何てこと無かったのに
朝起きてみればなんだかダルくて、心なしか身体が寒い

今日は大事な、大切な人の誕生日だと言うのに…

今日学校を休むわけにはいかない
どうしても直接会っておめでとう、とただその一声だけでもかけたいのだ

食欲もなく朝食を摂らないまま支度をして家を出て行けば、3月にしてはやや暖かな日射しにより少しだけ元気が出たような気がした

…実質、本当に気がしただけだったのだが


昇降口までなんとかたどり着き、パッと目当ての彼の下駄箱を覗き見ればまだそこには上靴しかなく、まだ来ていないことが伺えた

教室に着けば友達にニヤニヤと笑われ
何かと問えば今日はあれじゃない、と自分より楽しそうだ
…つまりは今日何するか報告しろという事らしい

しかし、そんなことを構ってられるほど今 名前に元気はない
自分の席につきふうっと息を吐いたとき、ガラッとドアが開きお目当ての彼が教室に入ってきて目が合った


「おはよう名前」
「、おはよ!」
「…どうしたの?」
「ううん。誕生日、おめでとう」


思わず駆け寄り一瞬襲った目眩に何とか耐え、今日一番言いたかった台詞を口に

…してから記憶が曖昧で、気がついたらベッドに横になっていた
薬品の臭いが鼻に付く
思考回路も曖昧だったが、ここが保健室と言うことは何となくでわかった

どうやらあのあと倒れてしまったのであろう
壁にかけてある時計を見ればもう1時間目の最中

何とかして身体を起こそうとするが、それを誰かに阻止された

…そこには愛しい大好きな彼の姿


「熱、少しあるみたい」
「!やっぱり…」
「朝からだったの?…なんで」
「…精市に、会いたかったから」
「っ、…あぁもう!」


幸村の手によって前髪が上げられ額と額をコツンと当てられた
間近で見る彼の顔は、多分今の自分と同じくらいに真っ赤
困っているような、でも嬉しそうなその表情はまあ何したって綺麗なのだが
そんなにじっと見つめられては名前の身体がある意味持たない

遠慮気味に名前を呼んでみれば今度は両手でふわりと顔を包み込まれた
依然として額はくっついたまま


「あー、もう…なんでそんな可愛いこと言うかな」
「…ぇえ?」
「名前の前では、もっと余裕で居たいのにさ」
「…って、言われてもなぁ」


困った顔で言えば今日初めて重なった唇
多少の熱があるなどお構い無し

名前の息の限界が来るまで
少し強引に名前の唇に食らいつく


息も絶え絶えで離れれば、熱があるのにさらに割り増しで赤くなる名前の頬

それを見てハッとし、またシュンと落ち込む幸村


「…いつもこうだ、格好悪…」
「そんな事ない。精市はかっこいいよ」
「っ、俺…いいのかな」
「なに、が?」
「…幸せすぎる」
「っ、誕生日だもん」
「ふふっ…じゃあもう少しカッコ悪い俺になるけど、いいよね」
「…ん、」


降り注ぐ口付けの嵐
授業中であろうと、保健室であろうと関係ない
今日は彼の誕生日なのだから

カッコ悪いなんて思わない
自分の愛する彼なのだから

1年に1度の特別な日だからこそ
2人だけの時間を共有したい


幸せすぎる時間は、貴女がいるからこそ
自分から奪ってしまえば、もう何も残らない






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