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●白いと青い



王威ワンウェイは、烏立ウリュウがいれた紅茶に口を付けると席を立った。

烏立は何も言わず、それを送り出す。
晴れた日は、いつも散歩と称して独りぶらぶらと出歩くのが王威の日課なのを知っているからだ。














――夢の中でなら逢える



確かにそうかも知れないが、目覚めた後必ず罪悪感が残るのだ。
王威は不機嫌だった。


いつもの様に、お気に入りの庭に向かおうとしたが途中でふと、足が止まる。
何故、そんな事を思ったのか定かではないが、少し遠回りをしようと足を反対に向けた。










§



『純白っ!!』



この叫びにも似た声音で、全ては始まった。





それは体育の授業中だった。
身体の弱い俺は、案の定見学で、初めは真面目に見学していたのだが、段々飽きて暇になってきた。
大きな欠伸を噛ましながら余所見をした時だった。



自分の名を呼ぶ凜都の声がしたかと思うと、バチンと言う音と共に頭に響いた痛み。
何が起こったのか分からなかったが、衝撃に顔を歪めた。



「っ....!」

「純白っ、大丈夫か?!」



焦った様子の凜都が駆け寄ってくるのを、俺はぼんやりとした頭で見上げた。
どうやら倒れたらしい...。

痛む頭を押さえつつ、上体を起こした。



「純白、大丈夫か?」

「余所見でもしてたのか?避けられると思ったけど...」



凜都がしゃがみ込み、大丈夫かと俺の顔を覗き込む。
後ろに居た生徒の言葉に視線を送れば、足元にバスケットボールが転がっていた。

俺はやっと状況を理解する。
どうやら、逸れたボールが見事頭に命中した様だ...それにしても、そんぐらいで倒れるなんて恥ずかしい。もう少し鍛えた方が良いかな...?



「純白、」



そんな事を考え込んでいると心配そうな凜都の声に顔を上げる。



「あ、大丈夫、大丈夫。」



苦笑しながら答えると、本当にと疑り深い目を向けられた。
本当に、凜都は心配性だ。



「少し冷した方が良いな。立てない様なら運んで行くぞ」

「ぅえっ!?い、いい!大丈夫っ!」



額に小さな腫れを見つけた凜都がそう云うや否や、手を差し入れてきた。
俺は焦って、断りを入れる。

だって、明らかに(所謂)お姫様抱っこで運ぼうとしやがったからさぁ.....いくら何でも傷付くよ、俺。


凜都は納得いかない顔をしてたけど、こんな面前で姫様抱っこは御免だ。
しかし、凜都の自然なまでの手際良さに流石は保健委員と、一人感心する。

ってか、凜都の性格を考えたら....







「純白、念のため一緒に保健室に行こう」



ホラ、きた。
全く、凜都は心配性だ。



「ん、でも大丈夫だ「駄目だ腫れてるだろ?見てもらうんだ」



有無を云わさぬ凜都の迫力には敵わない。でも、一男としてここで引き下がる訳にはいかない。何としても、お姫様抱っこ(+騒ぎになる事)だけは避けなくてはっ!!



「り、凜都はまだ授業あるだろ?俺は一人で行けるから大丈夫だよ」



譲る気のない凜都には、こうでも言うしかないだろう。
多分、一人でってのにも怒られそうだけど。



「歩けるなら大丈夫じゃん?な、天音」

「あ?あ、うん。うん大丈夫!」



見かねたクラスメートが声を発した。俺はここぞとばかりに頷いて凜都を見る。
案の定、凜都は納得のいかない顔をしているが、本当に大丈夫なのだから仕方ないよな。



「.....分かった。その代わり、終わったら行くから保健室でそのまま待ってるんだよ?」

「分かった」



相変わらずの過保護ぶりに苦笑を漏らしつつ、俺は頷いて立ち上がる。





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