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●白いと青い





「....ぃ、.....」

「......ん、?」

「王威、こんな所で寝ては風邪を引きますよ」



そよそよと、開けた窓から吹き込む風に書類が数枚、床へと舞い落ちる。
書類を拾い上げて机に目をやれば、静かに寝息を立てる主が居た。

少し戸惑った末に、遠慮がちに声をかけた。




誰かに呼ばれた気がして、王威は夢から覚醒する。
先程見ていた夢は悲しくもあるが懐かしい夢。
自分を呼ぶ声が、あの人なら良いのに...しかし、目覚めた矢先、目の前に居たのが自分の右腕である烏立ウリュウだった事から落胆し、不機嫌になり眉間にシワを寄せた。


王威の気を察した烏立は苦笑しながら、拾った書類を元に戻す。




「何か入れましょう。紅茶で良いですか?」



王威が飲むのは、いつも紅茶と決まっていたが一応聞いてみた。
王威は黙って頷いた後、気難しそうな表情で遠くを見つめる。



「....夢」

「はい?」



ティーカップに紅茶を注いでいると、ぽそりと王威が呟いた。
烏立は不思議に思い顔を上げる。そんな烏立を知ってか知らずか、王威は視線を向ける事なく話しを続けた。



「...あの夢だ」



その一言で、烏立は全てを理解する。
王威は普段、夢など滅多に見ない。しかし、ここのところ頻繁に見る様になったあの夢

昔の思い出――夢。が悪いとは言わない。
しかし、あの夢を見た後の王威は悲しげな目をするのだ。

恐らく本人は気付いてないだろうが。




「王威。出過ぎた真似かもしれませんが...その夢が、昔の思い出が貴方の重荷になる様なものなら...忘れてしまった方が良いのではないですか?」

「....」



前々から思っていた事を伝えた。

王威は黙ったまま、視線だけ此方に向けた。


お前には関係無い


向けられた目が、そう言っていた。



「....申し訳ありません、」



烏立は目を伏せ謝罪し、止めていた動作を再開する。



「....約束した。」



暫くして、また王威はポツリと独り言の様に呟く。



「...願う限り....逢えると」

「...王威」



烏立は王威の求めて止まない約束の人に直接会った事がなく、顔も幼い頃の写真でしかしらない。
けれど、王威にとって、どれだけ大切な人なのか...それだけは理解していた。
決して自分では埋める事の出来ない部分も全て、約束の人ならば埋める事が出来るのだろう。






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