●白いと青い 黒豹の庭 無我夢中で走って、目についた庭先へと飛び出した。 くるりと振り返り後ろを伺うと、追ってきていた奴等が何やら叫んでいるが、そこから追って来る様子がない。 やっと、諦めたのか? 奴等が見えなくなったところで、前のめりに倒れ込んだ。 「はぁ、はぁ.....」 くそ!こんなに走ったの何時以来だよ... 蹲り、動悸の止まない胸を抑えて鎮まりを待つ。 視界に薬入りのペンダントが揺れた。 薬は出来れば飲みたくない。 飲めば辛いのは治まるが、それも一時だし、後々の副作用が辛いのだ。 す、少し休んでこ......結局、授業には間に合いそうに無いけど。 また凛都に怒られるかな?なんて頭の隅で考えていると、奥の方でくぐもった呻き声が聞こえた。 「?」 なんだろ?と思い覗き込むと同時に、少し前方―――目の前に倒れ込む男が目にはいった。 「ぇ.....!」 そして、その男が倒れ込んだ先に現れたのは―――漆黒を纏った男 あ!この人..... そう、初めて此処に来て道に迷った時に会った彼だ。 そして今の現状も、また同じく。 彼の足元には数人の生徒が倒れていた。 ま、またですか? どんだけ暴れれば気が済むんだ、この人は... 俺は半ば呆れて口を開いたまま、前方に広がる光景を見ていた。 そんな俺に気付いた彼―――漆黒の人、は此方を見て目を細めた。 げっ!バレた.....どうしよう? この人から逃げ出せるかは、兎も角、立ち去りたくとも体が動かない。 「あ、ごめ.....別に邪魔するつもり....その、追っかけられてて!.....親衛隊とか何か訳分からない人達が居て、その」 あたふたと言い訳にならない言い訳をする。 嗚呼、もう!何言ってんだ俺はっ! 俺の言葉を聞いた男の眉が、ピクリと動いたのが分かり思わず体を強張らせた。 「ぅ......えと、」 何とかしようと、言葉を探すが見付からない。 焦る俺を他所に、男が口を開いた。 『....生徒会』 ポソリと呟かれた、透き通る様な声に、目の前の人を見上げた。 うっ! な、なんか知らないけど、一層機嫌が悪くなった様な....そんな相手の表情に生唾を飲み込んだ。 凛都....ごめんなさい。俺は無事に....いや、生きて帰れるか分かりません 遠くで授業の開始を示す鐘がなる。 まるでそれが俺の最期を告げる警鐘の様で..... 縁起悪っ!! 『ここ.....』 「ぅえ?」 一人で唸っていた為、不意にかけられた声に上擦った声が出た。 『....僕の庭だから』 「はぁ....?」 静かに呟かれた言葉に疑問符を浮かべた。 僕の庭?....出てけってこと?でも、そんな感じじゃない....よね? 俺が怪訝な顔をしていると、また口を開いた。 『....誰も近付かない』 そこで漸く彼の言いたい事を理解した。 えっと、要するに.... 此処はこの人の庭だから誰も近付かない=近付く奴は潰す(今、目の前で伸びてる方達参照) この人の庭だから、さっきの親衛隊とやらも入ってこれなかった うん、何となく分かる気がする。凶暴だものね、この人。 「ご、ごめんなさい。それ知らなくて!す、少し休んだら出て行きます!」 やだからね、目の前で伸びてる方達みたいになんのは。 [前へ][次へ] [戻る] |