●白いと青い
・
それからの凛都は俺の傍を片時も離れなかった。
嫌な気分はしなかった――寧ろ、嬉しいぐらいだ。
だって、凛都は俺の事を心配してくれてるんだし。
たまに心配し過ぎなんじゃないかな?って時もあるけど...
*****
「ゴメン、純白!」
昼過ぎ、何時も通り次の授業の準備をしていた時だった。
凛都のただならぬ様子に、俺は首を傾げた。
「どうしたの?」
「俺、今から行かなきゃいけないんだ。先生に呼ばれてて....」
「なんだ、そんな事か...大丈夫だよ俺は。」
凛都を安心させるべく、ニコリと微笑んだ。
「出来れば、教室から出るなよ?一人にならないようにするんだぞ!」
「分かった、分かった」
お母さんみたいだな、凛都は。
俺が苦笑しつつ、時間なくなるよ?と急かすと、凛都は渋い顔をしたが観念したのかそのまま出ていった。
凛都を見送って、俺は一息吐くと机に突っ伏した。
帯刀いないのか....
チラリと教室を見渡したが、帯刀の姿も無かった。
そういえば前の授業も居なかったよな。
「ちぇ、少し話そうと思ったのに」
今回の一件の所為で、凛都と居る時間が増えた分、帯刀と話す事が出来ない。
部屋に帰れば可能だろうが、帯刀は帰りが遅いし、俺は寝るのが早く、完全にすれ違い状態なのだ。
「ん〜〜」
次の授業が始まるまで大人しくしていようと思ったが暇すぎた。
お手洗いにでも行こうかな?少しぐらい大丈夫だよね。
そんなに離れてないし、それに何かあれば、おもいっきり叫べばいいや。
そう思い、ガタリと椅子から立ち上がる。
******
廊下に人気は少なく、少し不安になったが大丈夫だろうと歩を進める。
途中、4〜5人の集団とすれ違ったその時―――
「.....っ」
急に後ろに引っ張られたかと思うと、背中に走った痛み。
痛みに顔をしかめながら何事かと見上げると、先程すれ違ったと思った集団が薄ら笑いを浮かべ立っていた。
「あんたが天音純白?」
集団のリーダーとおぼしき人が口を開いた。
男としては可愛らしい顔つきのその人は見たことがない。上級生ではないと思うが....
「そうですが、何か?」
警戒しつつ答えると、その人は眉をしかめて、
「あっそ、じゃあちょっと一緒に来てくれる?」
一応、尋ねてはいる様だが有無を言わせぬ口調に、ヤバいと感じた。
凛都が気を付けろと言っていたのはこの事か。
「すみません、もうすぐで授業が始まるので...」
俺が愛想笑いを浮かべ、その場を後にしようとした時、そいつは足を壁に当て、俺の退路を塞いだ。
流石にカチンときて、相手を睨み付けた。
「何なんですか?一体、」
「僕の神水様に近付いたらどうなるか教えてあげようと思って」
と、さも楽しそうに笑った。
神水様。様ですか?
益々付き合いきれない。これ以上付き合いたくない。
どうしようか?と考えた末に俺が出した結論は―――――
「あっ!」
逃げるが勝ち!
足を払い退けて、一目散に走り出す。
教室には無理だから、兎に角どこか隠れられる場所に!
******
「はぁ、はぁ....」
ヤバい!
元々、運動が制限されている体には長時間走る事が難しい。
たんだん苦しくなってきて、胸元で揺れる薬入りのペンダントを握り締めた。
いい加減休みたい。体が悲鳴を上げている。
だが、後ろから追っ手の気配。立ち止まればどうなるか分かったものじゃない。
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