●白いと青い 心配なんだ 凛都が心配してくれているのは痛いほど理解している。 申し訳なく思いつつ、下げていた視線をチラリと上げる。 「生徒会は出来る人間の集まりだって言われてるけど、その分、質が悪いんだ」 何時もの和やかな凛都からは考えられない声音で言われて、俺は思わず息を飲んだ。 「で、でも...千明先輩は優しいよ?」 それに美人だし。 俺が千明先輩を思いだして、うんうんと頷いていると又しても凛都の溜め息が聞こえてきた。 「そんなの表面上の話しだろ?他人をとやかく言うのは気持ち良い事じゃないけど...秋紅先輩はいつも笑顔で和やかな感じはするけれど、それが本物かなんて分からないし、俺はそうとは思わない」 「でも....」 あの千明先輩が? 俺が怪訝な表情で見上げれば、凛都は真剣な顔付きで話しを続ける。 「嘘なんて言わない...誰にだって裏の顔ぐらいあるだろうし。まぁ、秋紅先輩は潔癖症らしいから神水先輩みたいに見境なく誰かを相手にしたりしない分、マシだけど....」 誰にでもある裏の顔....凛都にもあるんだろうか、なんて考えてしまう。 それよりも、 見境なく...... やっぱりヤツ―――神水龍仁は悪魔の様な男だったか! 凛都の言葉に酷く納得。 「神水龍仁には気を付けないとね」 俺が大きく首を縦に動かし言うと、凛都は目を見開いて、 「気を付けるなんて!近付かないぐらいでいなきゃ!!あの人はセフレも多いって話しだし、飽きたら簡単に捨てて別の人に...ってそれの繰り返し。そんな危険人物に近付いたら駄目だ!絶対にっ!!」 俺はあんぐり口を開けたまま凛都を見つめた。だって、あの凛都からでるとは思えない台詞に、怒気の籠った口調。 俺は黙って何度も頷く。 「本当に分かってる?ムカつく態度とられても相手にしちゃ駄目だからな?!...嗚呼、もう手遅れかも、」 まるで子供を叱る母親の如く怒鳴ったかと思えば、今度は大きな溜め息をつき頭を抱えた。 「て、手遅れって...俺、また何かした?」 不安気に尋ねると、凛都は少し顔を上げて、 「ああ、違うんだ。ただ、去り際に神水先輩が言った言葉...」 そこまで凛都に言われ、あの時の事を思い出してみる。 神水龍仁が去り際にに言った言葉―――確か、 俺に手を出したらどうなるか、此処のルールをよく覚えておくんだな。 そんな事を言っていた筈だ。 いま思い出しても腹がたつ! 「先輩は人気があるからね」 人気っ!? 確かに顔は良いかもしれないけど...皆騙されてんだっ! 「ファンクラブがあって親衛隊なんか出来てるぐらい....」 「ファンクラブ!?親衛隊!?」 凛都の言葉に声を荒げてしまった。 だって、ファンクラブとか親衛隊って...... 余程俺が呆けた顔をしていたのか、凛都が心配そうに覗き込んできた。 「そう。ここじゃ無理からぬ事だって、割り切らないといけないけど。だからさ、嫉妬深い人も居る訳だよ。」 「....はぁ、」 「先輩が言っていたのはその事だ。」 俺が分からないという顔をしていると、 「だからさ、俺に手出ししたら親衛隊が黙ってないぞってね」 親衛隊が黙ってないぞ!って、先に突っ掛かってきたのはアイツなのに? 「なんだよ....それ」 「だから、痛い目に合いたくなければ当分の間は俺の傍から離れたら駄目だ。一人にならないように気を付けるんだ」 い、痛い目って... 凛都の真面目な顔を見れば冗談なんかじゃない事は一目瞭然だけど。 [前へ][次へ] [戻る] |