●白いと青い
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§
寝苦しい
何度か寝返りを打って、俺は目を覚ます。
水が欲しい
そう思いリビングに向かう。
時刻は2時を回っていた。
リビングに出た時、暗がりに人影を見つけた。
此処に居るのは、俺か眼鏡だ。
「ちっ...おい、何やってんだよ」
窓辺で布団にくるまり蹲るそいつに吐き捨てる様に言えば、ビクリと肩を震わせて、ゆっくりと振り向いた...
「っ!」
振り向いたそいつの顔を見て息を詰まらせた。
眼鏡は外していて、俺を見上げるその顔は憂いを帯び、瞳は潤んで虚ろげだ。
月明かりに照らされた、その表情は美しく、惹き付けてやまない。
確かに自分を見上げては居るが、その瞳には何も写ってはいない。
ざわり、と胸がざわめく。
こいつは本当に、あの生意気な眼鏡と同一人物なのか?それさえ疑いたくなる。
俺が唯茫然と見つめていると、虚ろな表情のまま手が伸ばされた。
まるで誰かを求める様な行為にも、俺は動く事が出来ずにいた。
「 」
唇が僅かに動いたかと思った瞬間、左右色の違う瞳の片方からポツリと涙が流れ落ちる。
無意識だった
気が付いたら、俺は目の前のそいつを抱き締めていた。
何故かそうしなければいけない気がした。
消えてしまいそうで、怖かった。
とても儚くて
抱き締める腕に力を込めた。
確かに聞こえた
あの時、呟いた言葉
助けて
酷く胸が痛んだ
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