●白いと青い ・ 男は近くにあった木材を手に襲い掛かった。 (待ってよ!それで殴る気?!) 考えるより先に体が動いた。 「待って!駄目だよ!」 止めたくて、形振り構わず男の前に飛び出した。 「邪魔なんだよ!」 「ぅわっ!」 男に突き飛ばされ、どさりと倒れてしまった。 痛む腕を堪えながら顔を上げれば、 「.......」 さっきまで動いてた...襲い掛かった男まで倒れてて、ただ冷めた目で男等を見下ろす漆黒の人が佇んでるだけだった。 サァ、と風が駆け抜け俺の髪を撫でる。 暫くして、漆黒の人は俺に視線を移すとゆっくりとした足取りで近づいて来た。 ただそれだけで、少し胸が詰まる。 「.....ぅ、」 目の前で歩を止め、すっと手を差し出す。 彼の行動が分からず、俺はじっと相手を見つめた。 (...この人、何だろう?良く分からないけど、悲しんでる?) 冷めて冷酷に感じた表情は、よくよく見ると、どこか憂いを帯びた悲しげなものに感じた。 俺は似た人を知ってる.... 「ぁ、」 不意に差し出された手からヒラリと落ちて来たのは絆創膏。 [前へ][次へ] [戻る] |