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●白いと青い



「....何にもありません。だから放してください!」



俺がそう言うと、先輩は俺の顎を掴み顔を無理矢理上げさせた。


「こんな顔の何処が何もないって?」

「....っ!」



泣かない様に唇を噛み締めるけど、溜まった涙は誤魔化しきれない。
咄嗟に顔を反らして抵抗をみせた。



「先輩には関係ありません!いい加減放してくださいっ!!」



必死に身体に力を入れるも、先輩の力は強くて魚籠ともしない。
どうして?どうして放っておいてくれないの?
これ以上一緒にいたら酷い事を言いそうで恐い。



「大体、生徒会長だからって何でも話さなきゃいけない決まりなんてないですし、俺は....俺は放っておいて欲しいんです!なのに何で?お節介です!そんなのちっとも嬉しくない!!」



頭に血が昇って、一気にまくし立てた。先輩の顔を見るのが恐くて俯いたまま。
あぁ、最悪だ。
完全な八つ当たりだし、先輩は何も悪くない。









「....言いたい事はそれだけか?」

「....え?」



自己嫌悪に陥る俺に、先輩は尋ねた。それは怒りなんかじゃなく、宥める様な落ち着いた声音だった。
見上げた先にある先輩の顔は穏やかで、真っ直ぐな視線を俺に向ける。
そんな龍仁先輩に、目頭が熱くなるのを感じた。




「吐き出せる分は全部吐き出せ」

「...ふ、ぇ」



優しくされ、俺の緩んだ涙腺はいとも簡単に崩壊する。
ポロポロと涙を流す俺を、引き寄せると、そのまま抱き締めてくれた。
先輩のあやすように背中を叩く行為が心地よい。




「...お、俺っ...く、嫌われたの....かもっ!」

「....嫌われた?」







§


俺の腕の中で泣きじゃくる純白。その様が何とも頼りなくて、なんとしても守ってやりたい。
何があったか知らねぇが、コイツにこんな顔させる奴は殺す!



何度か背を叩いてやると、嗚咽を漏らしながらも何かを伝えようとする純白。


自分は嫌われたかも、そう話す。


は?嫌われたかもって誰にだ?


「...さっき、ぅ黒に...あったん...けど、ぐすっ...何か様子が変で」




...またあの野郎か。

はっきり言って俺はアイツが嫌いだ。
いつだって澄ました顔して、いつだって純白の傍居る。
幼なじみだか、何だか知らねぇが気に食わねぇ。由りによって、純白が泣いてる原因がアイツってのもムカつく。




「アイツがどうした?」

「...俺の事、さ...避けてるみたいで...目も、合わせてくれない...ぅく、俺、何にも心当たりなくて.....ど、どうすれば、うぅ」



避けてる?


涙ながらに話す純白は何も知らねぇから余計に不安なんだろう。
俺も理由を知ってる訳じゃないが何となく心当たりがある。

まぁ、どうでもイイが、純白にこれ以上こんな顔させたくねぇ。



「純白、泣くな....可愛い顔が台無しだろ」

「....ん、」



頬を両手で包み、顔を上げると涙の跡を追う様に口付けた。
純白には悪いが、内心笑む自分がいた。

...王威、理由はどうあれ弱りきった純白を俺に見せるなんて迂闊だな?俺はいつだって、お前から奪う覚悟はできてんだ。
悲しそうに泣く純白を見て余計に火がついた。

お前に純白は渡せねぇ...。




「...純白、大丈夫だお前には俺がついてる」

「...龍仁先輩」

「俺はお前を見捨てたりしねぇよ。いつだって傍に居てやる」



そう言ってやれば、純白の大きな瞳から宝石みてぇに綺麗な涙の粒が零れた。
くしゃりと、顔を歪めると純白は俺の肩口に顔を埋めて、震える声で囁いた。












「....放さないで、」


「...あぁ、放さねぇよ。お前がイヤつってもな」



震える身体で必死にしがみついてくる純白が愛しくて仕方ない。
誰にも目の届かない場所に隠しておきたい。


ちらりと腕時計で時間を確認する。
まだ大丈夫だ。


本当はこんなゆっくりしてる暇はねぇけど、一人にしたくねぇし、俺の目の届く範囲なら守ってやれる。

軽く、純白の髪に唇を落とすとゆっくりと抱き上げる。



「....安心しろ、一人にしねぇよ」

「.....」


小さく頷くのを確認して、歩を進めた。
どこか二人きりになれる場所に。




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あきゅろす。
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