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●白いと青い



「所で君は何故此処に?美術部でも無いよね?」

「...あ、ハイ。花壇が気になったので」



郷壬先生は俺の疑問などお構い無しに、またしても神業的早さで眼鏡を戻して微笑んだ。



「...生き物を愛でるのはとてもイイ事だよ。たとえそれが"碌でなし"と謂われる奴であってもね?」

「...え?」



先生の言葉の意味が分からず聞き返せば、此方の話し、とはぐらかされた。
郷壬先生って不思議な人だな....。



「あの、先生は美術担当なんですか?」

「違うよ。私はこの通り、科学教諭」



そう言って、着ていた白衣を示した。
成る程、科学教諭だったのか....納得。



「でも、何で....」

「あぁ、私は美術室には度々来るんだよ。翁川先生に会いにね?」



綺麗な微笑を浮かべた郷壬先生に、ついつい見惚れてしまう。
それにしても、翁川先生に会いに美術室に来るなんて...........怪しい理由だ!




「...君は翁川先生の趣味を知ってるかい?」

「え?....いいえ」



不意に振られた話しに、二人の関係について考えていた俺は慌てて空返事を返した。



「読書だよ。それも結構な読書家でね」

「へぇ...」



あの翁川先生が!と思ってしまう俺は失礼な奴だな。



「私も無類の読書好きでね。翁川先生とは趣味が合うんだよ。だから良く本の貸し借りをしていてね」

「あ、そうなんですか」



なんだ〜、少しつまらないなぁ。
ウハウハ(死語)な話を期待していた俺は、それを誤魔化す様に微笑んで郷壬先生が持っていた文庫に視線を移した。

てか、シェイクスピア!?
難しそう....。





「....そう言えば」

「?」



机に凭れ掛かった郷壬先生は、思い出した様に口を開く。



「此処に先程まで誰か居たかい?」

「....え、はぁ、」



俺が曖昧な返答を返すと、郷壬先生は口許に微笑を湛え、



「...当ててみせようか?」



そう囁いた。
何とも言い難い怪しい色気に、思わずドキリとしてしまう。



「....叶氷護...先生とか?」

「....!凄い、どうしてわかったんですか!?」



思わず郷壬先生に詰め寄れば、クスリと小さく笑われた。
何故、叶先生が居たことが分かったんだろう?煙草の臭いも消えているのに。




「分かるよ、私なら。......どうせ用事が出来たとか言って逃げたんでしょう?」

「え!そんな事まで分かっちゃうんですか?!」




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あきゅろす。
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