縞色猫×白色兎
縞と白の夏祭り
「賑やかだねぇ」
出店が道の両端に並びその上には赤や白の提灯が連なって明かりを点しており、浴衣や甚平を見に纏った老若男女が行き交っている。
菖蒲色の甚平を着たチェシャ猫は隣を歩く乳白色の甚平を着た白兎に笑いかけた。
「そうだな、皆も楽しそうだ」
アリスや三月兎達と共に訪れていた祭だったが逸れてしまい二人で行動しているが、本当はアリスとチェシャ猫の企みによって成り立った別行動である。
けれどその事に白兎は気付いていたが気にするだけ無駄なのでそのままアリス達を探そうとは思っていなかった。
「白い兎君、何か食べるかい?」
「タコ焼き…食べたいな」
白兎の要望にチェシャ猫は二つ返事で答え、白兎の手をとって歩きはじめた。
「チェシャ!手を離せ!」
「キシシ、逸れると危ないだろう?」
ふざけるな、と白兎は怒鳴ったがチェシャ猫は聞こえない振りをして手を握ったままタコ焼きの屋台へと歩みを進めていく。
「タコ焼き一つ下さい」
タコ焼きの屋台の前まで来るとチェシャ猫は名残惜しそうに手を離して財布から出したお金と引き換えに出来立てホカホカのタコ焼きが入った皿を受けとった。
「ついでに焼きそばも買おうか」
「ああ…」
片手にタコ焼きを持ったチェシャ猫が空いた手でまた白兎の手を握ろうとしたが、今度は握られるより早く白兎がその手を躱した。
「キシシシシ、つれないなぁ」
「うるさい」
焼きそばの屋台の前につくとチェシャ猫はタコ焼きを一度白兎に預けてから焼きそばを一つ購入した。
「チェシャ、なんでタコ焼きも焼きそばも一つしか買わないんだ?」
「他にもいっぱい美味しそうなものがあるからねぇ」
ふと思った疑問をチェシャ猫に聞けばそう答えられて白兎は納得した。
幾つも並ぶ屋台はお面や金魚掬いなども有るが多いのはやはり食べ物系だ。タコ焼きと焼きそばだけで腹を膨らませてしまっては勿体ないとも言えるだろう。
「あそこで食べようか」
チェシャ猫の指さす先には座って食べれる事が出来るようにとベンチが一脚置かれていて、幸い今は誰もいなかった。
二人並んでタコ焼きと焼きそばを口にする。
値段の割には美味しくはないのだが祭の雰囲気が美味しくさせる。
「あ、白い兎君」
「なんだ」
チュッというリップ音が白兎の口元で鳴った。
「青海苔ついてたよ」
「…っ言え!取るなら口じゃなく手で取れ!」
顔を紅くして怒鳴る白兎をチェシャ猫は楽しそうに笑いかけた。
「キシシシシ、ご馳走様」
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