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だってそういうことでしょう
微熱(S×H)
信也×春樹
キリリク/エロ無し/げろ甘

ジュン様に捧げます






「37度8分。」


信也が体温計を読み上げるのを、雲井春樹はどこか他人事のように聞いていた。
頭がぼーっとする。
鼻水が止まらない。


「へぶっ」


ついでにくしゃみも止まらない。


「風邪だな」


「うゆ」


ぐす。
鼻をすすりながら返事をすると、信也はぽんぽんと俺の頭を撫でた。

とにかく朝から体がだるくて、大学を休んだ。
こんな日に限って姉の柚希はまた新しい彼氏とやらと旅行とかでいないし、まぁ居たとしても看病なんてしてくれないだろうけれど。
とにかく風邪薬を飲んでずっと寝て、やっとマシになって腹が減ったのでふらふらしながら冷蔵庫を開けてみたら玉子しか入ってない。
休んだ事を心配したらしい信也から何度か着信が入っているのに気付いたのはそれからの事だ。

汗かいてるし顔も洗ってないし寝癖ついてるしコンタクトつける気力もなくて眼鏡だし。
こんな酷い見た目で信也に会いたくなんて無かったけれど、それでも本人が来るって言い張ったんだから仕方がない。
だけれど、来てくれたのはちょっとだけ嬉しい気がする。


「うつるから帰れよ」


「やだ。俺馬鹿だから風邪ひかねーし」


鼻声の酷い声で言うけれど、信也は頑固に言い張った。

・・・我ながら可愛くない。
素直にありがとうが言えない自分のこういう所、嫌いだ。
信也もこんなのによく付き合ってくれるよな。

信也はがさがさスーパーの袋を探って、ペットボトルを枕元に置いてくれた。
ここに来るときパンパンに膨らんだスーパーの袋を二つ下げていたから、買ってきてくれたんだろうけど・・・買い込みすぎだろ。
ただの風邪だってば。どんだけ心配してんの。


「何食べたい?」


勝手に緩む頬を隠すために、はぁとわざとらしいため息。
・・・帰ろうとしない信也に、ホントはちょっとだけホッとしてるのは内緒だ。


「・・・おかゆ。梅干しはいったやつ。ネギも。」


「ん。了解」


目をそらしてぽつりと言うと、信也はふっと笑って俺の頭を撫でた。





 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄





額には熱を下げるための冷却シート。キッチンから聞こえてくる鼻歌と、たどたどしいネギをきざむ音。

なんか、変な感じだ。

俺の家で、信也がおかゆを作ってる。

いつも料理を作るとしても俺の方だし、信也が料理する姿なんか見たことない。・・・ほっといたらコンビニで済まそうとするし。
ついでに、なんというか看病されてる気がする。いや実際そうなんだけど。
これじゃいつもと逆だ。

横になっているのに、昼間眠ったせいか妙に目が冴えて眠れなかった。
弱っているからだろうか。見慣れた後ろ姿はなんとなく頼もしく見える。

うう。頭ぼうっとする。
冷却シートが冷たくて気持ちいい。


「春樹。食える?」


出来上がったお粥を運んできた信也がベッドに腰かけた。

心配そうに見つめる瞳。

熱でもあるんだろうか。なんか信也が格好いい気がする。
あぁ、そういやホントに熱あるんだった。


「春樹?」


「・・・食えない」


「?」


「からっ、食べさせろ」


これは全部風邪のせいだ。

ぽそりと呟くみたいに言うと、信也は一瞬だけ驚いたみたいな顔をした。だけれど


「りょーかい」


すぐにへにゃりと目尻を下げてレンゲを手に取った。
・・・そんな優しい顔するな。
なんか恥ずかしいだろ!



ベッドの上に半分だけ体を起こした俺に、信也が念入りにふうふうしてレンゲにすくったお粥を口に運ぶ。
その度に俺はまるで雛鳥みたいに口をぱかっと開いて信也からの餌付けを待っている。
なんか恥ずかしい。
けれどもちょっとだけ、ほんのちょっとだけ楽しい。


「おいしい?」


「ふつー」


「ああそう良かった」


傍若無人な振る舞いにも信也は嫌な顔一つしなかった。
むしろちょっと嬉しそうで。
・・・調子乗りそう。

俺だって弱ってるんだ。

ちょっとだけ
ちょっとだけ。

どくどくする胸の鼓動を無視しながら、ぽす、とだるい頭を信也に預けてみる。
細くてひょろひょろした薄い胸板。こいつちゃんと食べてんのかな?

ああでも、・・・信也のにおいがする。

髪を撫でつける指が気持ちよくて目を閉じた。


「これ食べたら寝なさいな」


「・・・やだ」


「やだじゃない」


駄々をこねる俺に信也は呆れて笑う。
・・・だって俺が寝たら信也帰るだろ?

来ないと分かってたら平気だった。だけれどこの暖かさを知ってしまった以上、一人でいるのは寂しい。
このまま寝て、目覚めたときに信也がいないのはきっと、もっと寂しい。

もっと居ろよ。
言わなくてもわかれよ。

不満気に見上げてみるけれど、信也は当然気付くはずがない。不思議そうに首を傾げるだけ。
そりゃそうだ。
言葉足らずは俺の悪い癖だ。わかってる。



「・・・ばか」


「理不尽すぎるだろ」



信也は訳が分からない、と吹き出して笑った。

さっきまでオレンジ色に染まっていた外は日が落ちて真っ暗になっている。
夏が過ぎて季節は秋。
昼間は暑くても夜は冷え込む。

この季節は苦手だ。
なんとなく寂しくなる。
しかも風邪ひいてる。熱だってある。

だから、これは全部そのせいだ。



「・・・寒い」


「?じゃ、ふとん」


「馬鹿だから風邪ひかないんだろ」


信也を遮っておずおずと見上げて言った自分のセリフに頬が熱くなった。
信也は目を合わせたまま、戸惑っている。


「寒い」


だから、早く抱きしめろよばか。

恐る恐る背中に手を回すと、信也は壊れ物を扱うみたいに俺を抱き締めた。


・・・あったかい。





end







ジュン様、素敵なリクありがとうございました。

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あきゅろす。
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