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一話 落下





……えー



Q.落ちてますか?

A.落ちてますね?


Q.何故ですか?

A.何故でしょう?


状況確認開始。

今、僕は落ちている。

どこまでも広い青空を。

ああ、雲ひとつ無い、快晴だ。

太陽がこんなにも近い場所で見るなんて、きっと僕の人生でもう二度と無いだろう。

首を無理矢理捻って後ろを向く。

現在進行形で落下中のため、烈風が顔に直撃して、顔が凄いことになるのは御愛嬌。

それでも、薄目で地面と自分の高度差を確認する。

高い。

半端無く高い。

いくら剣と魔法の世界って設定だからと言って、この高さから落ちたら間違いなく死ねる。

…と言うか、剣と魔法の世界でも普通に屋根から飛び降りて死ねるんだけどね。

まあ、そんなことはどうでもいいんだけど。

どうしてこうなったのか。

それって意外と重要だと思わない?

確か今日は普通に朝起きて、普通にセントエル学園に行ったはずだ。
…ああ、セントエル学園と言うのは二つの校舎と、教員棟、特別教室棟、それから部室棟と魔法訓練棟があって、学園に通う学生は全寮制。

学園敷地内には湖や森もあり、更には一部の場所に魔物が放し飼いと言う学園と言うよりはひとつの国みたいなものだ。

そして、僕が通っているのは二つの校舎の内のひとつ、魔法の素養や素質が無い人達が通う、いわゆる一般校舎だ。

魔法を笑顔で使えちゃうスーパー化物共は魔法校舎って呼ばれている一般校舎の隣にある校舎へ通うことになっている。

もちろん、魔法が使えるからと行って魔法校舎に通わず、一般校舎へ通っても構わないんだけど。

まあ、つまりどちらの校舎にもクラス、席が用意されていると言う訳だ。

因みに僕は入学当初から一般校舎にしか通っていないけどね。

…話しがずれたかな。

ええと、どこまで思い出したかな。

学園へ行ったんだっけ?

つまらない数学の授業をお菓子をつまみ食いしつつ携帯ゲームをしながら受けて、隣にある魔法校舎の授業を見てたんだ。

…見てた、って言うのとはちょっと違うかな。

窓の外を見たら偶然見えたんだ。

そしたら…ああ、うん、何があったのか綺麗さっぱり思い出せたよパトラ〇シュ。

太陽の光を反射して、艶やかに光る金色の髪。

しっとりと濡れた唇に、雪のように白い肌、特徴的な紅い眼。

外見だけならセントエル魔法学院の中で極上に可愛いの部類に入るだろう。

魔法の素質も、量も、間違いなく世界でもトップクラスだと思う。
だけど、肝心の魔力操作がかなり酷い。
魔力操作と言うのは簡単に言うと魔法の根本的な力の使い方。

これが下手なら、どんなに力を持っていても無駄だし、逆に上手いなら全然力が無くても魔法が発生させられる。

当然、限度はあるけどね。

彼女はこれが下手だった。

下手過ぎだった。

初等部の子供達よりも下手だ。

だから、授業では校庭の一部に穴を掘るだけなのを2m程のクレーターを作ったり、蝋燭に火を灯すだけでいいのを木を消し炭に変えたりする。

その度に彼女は涙目になって今にも泣きそうに先生の説教を受けているんだけれど、その姿は男子生徒達の一部が彼女に惚れるには十分だったとか。

…また話しが脱線しそうだ。

えっと、それで今回の授業内容は……風の操り方、だったかな。

窓際の席だった僕が空を飛んでいるってことは多分、きっと、恐らく、僕の予想だけど…一般校舎の一部を、風の弾丸か何かで吹き飛ばしたんじゃないかな。

そんなことを考えている内に、セントエル学園を視界内に捉える。

ちょうど一般校舎の三階部分、僕が座っていた席のあたりだけが、崩れていた。

…僕と同じく入学してからまだ二ヶ月と経っていないのに、彼女の破壊戦績はすこぶる好調のようだ。

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あきゅろす。
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