こわがらなくてごめんね
「……いた、い」


そりゃ痛ェだろ、男が本気でこの細ェ腕を掴んでんだからよ。

思ったが、口にはしなかった。
その代わりに誰も居ない屋上の床に縫い付けたその体に、ねっとりと舌を這わせる。


「っ……ん、あ」


時折音を立てて吸い付き、やりすぎじゃねーかって位に濃い痕を残してやった。
しかし小さな声を出して身じろぐ事があっても、彼女が震えたり怯えたりする様子はない。


「ンだよ…嫌だって言えよ…!」


チッと舌打ちして、顔の両脇で押さえつけていた腕を頭の上で一つにまとめ上げた。
空いた片手で制服と下着を強引に捲り上げ、露わになった膨らみに指を埋める。


「はぁ、っ…う、あ、」


だけど、柔らかいそれをいくら無理矢理に歪められようと、彼女は俺を拒否しなかった。
その先端を口に含んで嬲った時だって、膝を割って中心に指を埋めた時だって、前戯もそこそこに俺が腰を沈めた時だって、一切。

ぬかるみに沈んでいく感覚に背中が泡立った。泣きそうな感覚がせり上がってきて、イキそうなのを我慢するよりもはるかにツラい。


「さ、…さか…た、ぁ…」


なんで嫌だって言わねーんだよ。なんで両手が自由になってんのにつっぱねないんだよ。なんで俺の首に腕回してんだよ。なんで無理矢理入れられて苦しいくせに笑ってんだよ。なんで俺の名前を呼ぶんだよ。


「…んっ、あ、あ、あっ」

「頼むから…」

「う、んあっ、あっ…やっ」

「頼むから、拒否れよ…っ」

「は、あぁっ」


自分から話しかけてるくせに何も聞きたくないと、がくがく揺さぶり続けた。
そんなの酷いって言ってくれ。嫌だって、止めてって、嫌いだって言ってくれ。
あークソ、言ってくれだの聞きたくないだの、なんて矛盾してんだ俺ァ。


「あっ、あん!…ご、め…っ」

「……」

「…はぁっ、ごめん、ね…」


そんな時、するりと頬を撫でる柔らかい感触。下を見れば、真っ赤な顔をして必死に俺の汚ねェ欲望を受け止めながら、彼女が俺の頬に手を伸ばしていた。


「こわがらなくて…ごめんね…」


思わず、動きが止まる。


「はー、…はぁ…ひ、じかたくんに、笑って返事してても…坂田を捨てたり、二股したりしないから、だいじょうぶ。今まで通り仲良しでいようねって、それで笑ってただけ、誰でも受け入れるワケじゃ、ない…」

「……」

「今坂田を拒否らないのだって、誰でも受け入れるからじゃ、ない。あたし…坂田が好き、だから。坂田なら、無理矢理でも、こわくない…」


彼女は静かにそう言うと、繋がったまま体を起こしてぎゅうっと俺にしがみつく。
何だよ、なァ、マジで何なの?
なんでお前は全部わかってんの?なんで汚い嫉妬も不安も全部わかってんの?なんでその言葉だけで俺を救えんの?


「………」

「………」

「………悪かった」

「うん」

「嫉妬した。沖田くんに土方が告白してるって聞いて裏庭見に行ったら」

「うん」

「声は聞こえねーけど、笑って話してたから。お前は俺がいても拒否らねーのかと思って」

「うん」

「そんなことねーのにな。マジ、悪かった。好きだ、なァ、すげー好き」

「うん、あたしも」


ヒラヒラ、屋上に風が吹いて俺の腰元にある彼女のスカートが靡く。
その風が、俺の中の汚ねー感情も吹き飛ばしてくれた気がした。

あァそっか。
結局のところ、俺を好きなコイツとコイツを好きな俺さえいりゃ、何もいらねーってことなのか。




怖がらなくて、ごめんね




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