恋の敗者復活戦
「ま…まじでか…」


ガーン!
今のあたしには、そんな効果音がお似合いだ。…と言うのも、ほんの数秒前に同じ委員会に所属する先輩に告白し、見事フられた為である。


『俺を、好き?………あ、いや、あの…わ、わわわわ、悪いな。お、俺もうお前とは話せねーんだよ。…っていうのも実は……いや、まあ、とりあえず、その………ごめん!』


正に、しどろもどろ。
目を泳がせ、冷や汗をかきながらそう言った先輩は、脱兎の如く走り去っていった。そして、そんな先輩の背中を見つめて呟いたのが先の言葉である。

お前とは話せないって…うあー、もう…ちょ、ま………まじでか……。先輩ってばどんだけあたしのこときらいなんだよコノヤロー。

事の運びは万全だと思っていただけに、フられたショックはかなり大きい。
面倒極まりない委員会の仕事の手伝いをしてあげたり、調理実習で作ったケーキをあげたり、放課後残って話(彼氏がいるかって聞かれた時もある!)をしたり、一緒に屋上でお昼も食べたり……あたし的には、結構脈アリだったのだ。

…が、しかし。
それなのに、それなのにフられたのである。あっちだって満更じゃなさそうだったのに、フられたのだ。そう、それなのに…それなのに……それなのにィイィ!!!


「さっ……坂田せんぱァアァいっ!!」

「おー、どしたァ?」

「うわぁあん!あ、あたっ…あたし、今、フられたんですゥー!!」

「ふゥーん、そ」

「……え。」


…という勢いで突進するように目指したのは3年Z組。そこは先ほど告白した先輩のクラスでもあり、良き相談相手・坂田先輩のクラスでもある。
そんなクラスに行くのは、放課後で誰もいないとは言え少し心が痛いけれど…この告白の結果を先輩に伝えるべく(というか、寧ろ慰めてもらいに)フられた勢いのままにココへと走ってきたのだった。

けれど

当の坂田先輩ときたら、フられた事に驚くこともせず…というか何を言うわけでもなく、あっさりと肯定しやがった。


「ちょっ…先輩ィイ!?あたしフられたんですよ!可哀想な後輩を慰めてあげるのが相談相手であり先輩であるアナタの役目じゃないんですかコノヤロー!!」

「え、タルい」

「先輩ィイィ!?」


あたしのツッコミじみた食いつきを一言であしらった坂田先輩は、教科書やらノートやらを無理矢理机の中に押し込んでいる。くそ、先輩ってば受験生のくせに置勉ですか。勉強しないなら可哀想な後輩にパフェくらい奢れってんだコノヤロー。そう思って睨んでみたが、残念ながら先輩は見向きもしなかった。それどころかあたしがいることを忘れたかのように上機嫌で鼻歌なんか歌っている。

………今まで親身になって相談にのってくれていた割に、最終報告でこの態度は如何なものか。なんだか納得できなくて、腑に落ちなくて…恋愛もうまくいかない上に、先輩にまで見捨てられるのかとまたショックを受けた。思わず泣きそうになる


「なァ」


けれど、


「お前がフられんの、ずっと待ってたっつったらどうする?」


坂田先輩がこっちを見て、急に真面目な顔をするから


「相談相手じゃなく男として見てもらえんのかな、なんて思ってるっつったらどうする?」


出そうだった涙も、フられたショックも、どこかに飛んでいってしまった。
さっきフられたばかりなのに、ショックを受けたはずなのに、ドキドキと無駄に高鳴る鼓動。坂田先輩の真剣な瞳から視線を逸らせなくて、思わず固まる。

そんなあたしを見た坂田先輩は、脈アリですかァ?なんて笑った。
そして、


「告る前からアウトオブ眼中だった俺と、告ってフられたお前。敗者復活戦といこうじゃねーの」





恋の敗者復活戦


(まァ、告白受けたらどうなるかわかってんだろうな、ってアイツに言って、こうなるように仕向けたのは俺なんだけどね)


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