ボーダーラインを飛び越えろ!
半ば押し倒すようにせつなの上に覆い被さると、
細い体のラインがよくわかった。
「せつなって意外と華奢なんだ」
「貴方には負けますよ」
「……そうかな?」
せつなの手が、私の頭に伸びる。
髪を撫でるように、長い指を通して優しくすいてくれる。
何と無く、昔に戻ったみたい。
「ボタン外していい?」
「どうぞ」
言ってせつなは軽く笑う。
私は許可を得たというのに、どうも指がボタンに伸ばせない。
やっと首元のボタンに手をかけるけど、指先がもたついて上手く外せなかった。
くす、と笑い声が下から聞こえる。
「ほたる、無理しなくてもいいんですよ」
「……嫌。せつなに絶対分かってもらうんだから。私がもう大人だって」
「私は貴方が大人だ、と理解しているつもりですよ」
さっきも同じ事を言われた。
「でも嫌なの。こうでもしないと、私が納得出来ないわ」
つい力が入って、ぴし、と嫌な音がした。
手元を見ると案の定、ボタンが弾けて飛んでしまっている。
「あ、あ!ご、ごめんなさい!」
あぁ、そうだ。
無理に外そうとしなくたって、
「良いですよ別に。前にセールで買ったシャツですから」
(破っちゃえば、早いかな)
「そんな暴力的な事、貴方には似合わないです」
は、と気づくと、今度は私の頬に手が伸びていた。
頬が冷たいのか、とても手の温もりを感じられる。
彼女には、私の考えている事が分かったのだろうか。
深い石榴色の瞳に、歪んだ"私"が写っている。
「……そうだね、ごめんなさい。
どうも私は、いつもプルートを傷つけてばかりだわ」
「ふふ、私は貴方に振り回されてばかりですよ。嫌いではありませんけどね」
何と無く気分が落ち着いて、
昂った気持ちが収まっていく。
「駄目ね、直ぐに感情的になってしまうからまだ子供と思われちゃうのかしら」
「無理に背伸びしなくてもいいんですよ、私はありのままのほたるが好きなんですから」
「……うん」
再びシャツに手をかけた。
丁寧に、ボタンを外す作業をする。
すると今度は、すんなりと外れてくれた。
「……続けていい?」
「貴方が望むなら」
*****
ほたせつになってますかー!?
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