それでも星に還るというの(この心臓をあげるのに!) 「あなたの為なら、この腕だって足だって瞳だって、脈打つこの命だって私は捧げられるわ。それでも?」 「それでも、私はこの星を守ります」 「典型的過ぎるわ、プルート。でもそれがあなたらしいとも言える」 予めそう返答されるのが分かっていたかのように、サターンは苦笑を浮かべた。 彼女にしてみれば最後の問いだった。 プルートがシルバーミレニアムを選ぶか、自分を選ぶか。 勿論自分が選ばれれば嬉しい。しかし、自分を選ぶプルートは果たしてサターンが好きなプルートなのだろうか。 そう考えれば彼女は妥当なセレクトを行ったと言える。 自嘲するように鼻を鳴らしてから、サターンは背を向けた。 「待って、サターン」 「何?」 「私は、それでもあなたを愛しています」 「憐れみなら十分よ」 「違う、憐れみなんかじゃない、これは、本当に私の意思なんです」 振り返った時のプルートの表情にサターンは思わず苛立った。 そんな意思表示なんてせずに、何時も通りに無表情に見送ってくれたら良いのに。 どうしてそんなに、今にも涙を溢しそうなほどに歪んだ顔をしているのか。 目の前の彼女の何倍も生きているにも関わらず、子供のように無性に腹が立った。 だから次の言葉も苛立ち紛れに出た言葉で。ちょっとした意地悪のつもりだった。 「ならあなた、私と夜伽ができる?」 「………………!」 今日は珍しいことばかりだ。 表情を変えない番人が悲しんだり、戸惑ったり。 また自分も滅多に感情を高ぶらせることはなかったはず。 「恐らくこれであなたと出会えるのは最後になる。 だから最後に、憐れな私に思い出をくれる?」 明らかに困惑した風なプルートを見、自然と笑みが零れた。 彼女のポーカーフェイスを崩すことはとても楽しい。 いつの間にこんな嗜虐的な傾向になってしまったのだろうか。 そんな事を考えていると、ふつふつと煮えていた怒りが落ち着いていくのが分かった。 頭に昇っていた血が引いて、どんどん自分が冷静になっていくのが客観的に分かる。 漸く愛想笑いをする余裕も生まれた。今度は笑顔を作って言う。 「何てね。冗談よ。あなたが情けない顔をして」 瞬間、サターンの視界が揺れた。 間を置いて、金属が落ちた音。ガーネットロッドが転がっていた。 見上げた先には紅の瞳。オリーブ色の長髪が彼女の頬を擽る。 この状況から、何が起こったかは容易く知ることができた。 「……プルート?」 「……言ったでしょう。憐れみなんかじゃなく、私だってあなたが欲しいんです」 気が付けばサターンは床に組み敷かれるように押し倒されていた。 年齢は上でも、体格的にはプルートの方が勝っているため自由に身体が動かせない。 「……ふふ、」 やがてサターンはまた笑った。 「最高の思い出になりそうね」 肩を抑える手に力が加わったのを感じる。 「いいわ、共寝しましょう。時が私たちを引き裂くまでずっと。 あなたに私を捧げるわ。 だからあなたも今だけは全てを私に捧げて。心も身体も全てを」 *** 押し倒すプー様が書きたかったんです! どうも大人系って書くと事前か事後が多いけど(!)事中がないね! いつか書きます、鍵付きで笑" 前 |