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愛をもって降伏せよ


抱き締めて、キスをするだけが愛してる証拠にはならない。
これは私の持論だ。
昔、好きだった人が別の子と付き合っていることを分かって、想うだけに留めた。
それからの私の恋愛観は、ずっと変わらない。遠くからそっと見守るだけ。
友人達からは奥手だなんて言われるけど。
だから、今回もそうなると思っていた。


「チーフ、お早うございます」
「あら?お早う土萠さん。あなた、電車だった?」
職場へ向かう電車の中、突然後輩である土萠さんに声を掛けられた。
冷静を努めているが内心穏やかではない。
まさか朝から彼女に会うなんて。嬉しいけど柄にも無く緊張してしまう。
自分が密かに想っている相手が、いきなり予想外に現れたら誰だってそうなるだろう。
黒曜石のように真っ黒な髪、今時の若い人には珍しいおかっぱ頭(前は長かったんだけどこの前切ってしまった)、
病的なまでに白い肌、そして紫色の瞳。

彼女を一目見た時から私の心は奪われていた。

自分が一目惚れしてしまうなんて予想だにしなかった。
だから、私のチームに彼女が入ることになった時は本当に嬉しかったものだ。
ただ、勿論この想いを打ち明けることは絶対に無い。
そもそも私と彼女は同じ女(自分が女性に惚れてしまったのがまず吃驚だ。今まで女性を恋愛的な意味で好きになったことはなかった)。
十も歳が離れているし、更に言えば彼女は魅力的なので既に相手もいるだろうから。
彼女が今の場所を離れてしまうまで、私は彼女を見守っていたい。

「え?えっ、と、今日は、その……」
いけないいけない、考え事をしていた。
何の話だったか、そうだ。どうして電車に乗ってるかだった。
土萠さんは普段は交通機関にバスを使っていると聞いていた。
ちなみに私は自家用車を昨日から車検に出している為、しばらくは電車通勤になる。
「バスが遅れでもした?」
「………!は、はい!そうなんです」
どことなくぎこちないが仕方ないだろう。向こうからすれば私は只の上司なのだから。
しかし、偶然とはいえやはり心踊るものがある。
思わず緩みそうな頬を軽く叩いた。
「今日も頑張らないとね」
「はい!……あ、でも、チーフは最近少し頑張りすぎです」
「そうかしら」
「そうですよ。毎日始業前から来て終業後まで残って仕事されてますもん。
何だか痩せられた感じがします」
そうなのだろうか。
今はちょうど自分が提案したプロジェクトが採択されて、仕事がてんてこ舞いになっているのだ。
そのせいで部下達を振り回してしまっているから、せめて迷惑かけないようにとこうして毎朝早く行って……ん?
「………そういえば土萠さん、早くない?まだ5時よ?」
私は最近ずっとそんな生活をしていたから慣れたけど、始業まではまだ時間がある。
土萠さんはこんなに早く出なくても大丈夫だろうに。
それに、始業前に来て仕事してることは心配させたくないので誰にも秘密にしていたのだけど……?
「…………っ!」
すると、突然土萠さんの顔が真っ赤になった。肌が真っ白だからよくわかる。
一体どうしたのだろう。私は何か変な事でも聞いたのか。
「土萠さん?大丈夫?」
「はっ、はい!えっと……起きる時間、間違えちゃったというか……というか、チーフのお手伝い、させてください!!」
「私の?時間間違えたなら仮眠室で寝ていたほうがよくないかしら?」
「いえ!お手伝いします!」
私にしてみれば願ってもない有難い申し出なのだけど、彼女の体調が心配だ。
しかし、
「…………迷惑、ですか?」

上目遣いで私を見上げる彼女の顔を見ると、

「……いえ、あなたさえよければ」

自分の中の素直な心が彼女と一緒にいることを望んでしまうのだ。
ああ、見ているだけでは飽きたらないとは、なんと浅ましき我が心。



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パロ楽しいwwwwww何の仕事なんすかねwwwwwww

ほたるちゃんはガチで狙いに来てます
そしてほたるちゃんの猛烈アピールに気付かず一人どんどん片思いモードに入っている鈍感プー様。



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