「連れてって」そう言いかけて唇かんだ(時かけ/千真)
小さな頃から男まさり。
よく遊ぶのも男の子ばっかり。
だから手を繋ぐのも、肩組むのも全然平気。
女の子らしく、なんて意識したことなかった。
なのに。
「真琴早く来いよ」
この人にだけ熱くなる。
千昭の差し出してくれた手のひらに自分のを重ねた。
瞬間突き抜けた何か。
「なんかさあ、久しぶりだね千昭」
「何言ってんだよ。毎日嫌になるくらい俺も功介も会ってるだろ」
「うん、だから。二人っきりが久しぶりだね」
「…そうだな」
ふっと笑って繋いだ手に力がこもる。
手をつないでいても、時折千昭の存在がたまらなく希薄に感じることがある。
どうやったらこの気持ちを言葉にできるのかわからなくて。
ただ唇をかんだ。
「なあ真琴」
思い返せば、貴方はいつもふざけて笑っていた。
その笑顔の裏、どれほどの想いを隠していたのだろう。
「いつだってお前の側にいる。手の届くところで待っててやるよ」
-嘘ばっかり。
-ならどうして走っていくあたしはいつまでも貴方に届かないの?
「心配すんなよ。バカ真琴」
「しーてーまーせーんバカ千昭っ」
「はははっなんだよお前それ。…変な顔」
「!」
そうやっていつだって笑って誤魔化して。
--もう声すら貴方に届かない。
end
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