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ピンクシュガーに溶ける
「男の嫉妬かっこわるい。みっともな〜い」
悪魔と天使が一緒に出てったコート脇の、フェンスで出来た入口を見ていた俺の耳に入って来たのはこれまたうっぜー一言だった。そんな、自分が一番分かってるような事を指摘してくるとかマジうぜー。じゃり、と砂をならしながら寄って来た俺が着てるのと同じデザインのジャージ姿の女が言う。どうせお前だって俺と似たようなこと思ってんだろ。そう言えば、俺を馬鹿にしたコイツは本当に馬鹿を見るような冷めた目で俺を見て、遠くに行ってしまった赤也の背中を見つめた。
「んなわけないじゃん。アンタと一緒にしないで。私は言ったもの、ちゃんと好きだって。見てるだけしかしなかった、今も後輩の背中を射殺さんばかりの目で見てるだけのアンタなんかと一緒にしないでよ」
ガツン、と頭を殴られたような衝撃がその一言にはあったと思う。マジかよ…。さすがに今だけは赤也への殺意を忘れた。だって、コイツは、マドンナにも言えることだけどどこがいいのか赤也のことがすんげー好きで、それこそ赤也に惚れたのはアイツが入部してきた当初からだったから片想い期間は俺やマドンナや赤也以上で、俺達の誰よりも長い間どっぷり恋に浸って来たコイツこそ嫉妬で俺と同じかそれ以上の気持ちを持ってるはずだろぃ。俺はこんなにドロドロしたもん抱えてんのに、なんでお前はそんな清々しい表情でアイツらを見てられんだよ。赤也の背中に向けられてる目を見れば分かる。お前、まだアイツの事好きなんだろ。なのになんでんな真っすぐアイツらの背中見てられるわけ。
「彼が幸せならそれでいい、なんて映画みたいな綺麗事言えないって思ってたけど。案外気持ちの整理がついたらそう思えるものだよ。アンタも未練がましく見てるより、さっさと玉砕してきた方がいいんじゃない?」
はんと俺を鼻で笑った生意気な笑顔は、悔しいけどかっこよかった。多分、嫉妬まみれでぐしゃぐしゃの俺よりよっぽどか男前で綺麗な姿だろう。だけど、認められっかよ。好きな女を指くわえて見てる間に後輩にとられたなんざ。俺は勝負の土俵にも上がってなかったんだぞ。なんで振られるって分かってんのに告白できんだよ。赤也の答えなんて分かりきってたのに、それでも告白したコイツが眩しくて俺は目をそらした。

key word:ピンクシュガーに溶ける



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あきゅろす。
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