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ヘタレな俺


立花様より




誰にだって甘えたい時がある。
それは、甘えられる側にとっては、かなりの忍耐力と理性が必要なのを、意外と知られていない。





「ガナッシュ!」


甘えた声を出しながら、愛らしく抱きついてきた恋人。

凄く嬉しいのだが、今は休み時間で、皆がいる。

それなのに、大胆な行動をしてきたトキに、驚きを隠せない。

絶対に人前では、しないからだ。


「珍しいよね〜。」


クラスメート達も、驚いていた。


「どうしたんだ?」

「ん〜?何でもないよ。」


抱きついたまま、離れない。
リープは、いつもなら怒るくせに、怒らない。
何かが、おかしい。


「甘えちゃ、ダメ?」

上目遣いに見上げてくるトキ。
そのまま、頭を擦り付けてくる。

まるで、猫だ。


「嬉しいけど・・・。」


皆がいる前で、暴走出来ないのが、悔しい。

頭を撫でてやるが、それだけでは不満らしい。

ムスッとしていた。





服を掴み、より甘えた声を出す。


「キスして。
凄いやつ・・・。」


理性の糸が、なけなしの良心によって、何とか繋ぎ止めた。

男としては、凄く嬉しいのだが、素直に喜べない。

これが、二人きりならすぐさま、実行するのに、神様は悪魔だ。


「トキ。今ここで襲われるか、正直に話すか、選んでくれ。」


きっとトキのことだ。
何かあるのは、分かっていた。
早く気付いてやれば良かったのだ。

この子は、人一倍人に対して甘えられず、弱音を吐かない子なのだから。


「・・・・・。」


答えないトキ。
表情は徐々に歪んでいく。

きっと、昔の記憶を思い出したのだろう。
辛くて、悲しい記憶。

「行こうか。」


とりあえずトキを抱き上げたまま、教室を出ていく。


首に腕を回し、強く抱きついてきた。

やっぱり。
だから、リープは怒らなかった。
痛みを知っているから。


「・・・・ごめんなさいっ。」


か細い声で、謝る。
涙が混じっていた。
優しくしっかりと、抱き締め返す。


「我慢しないでくれ。
俺を頼ってくれ。」


きっと、トキは頼らない。

情けない恋人だと、自潮気味に笑いながら、トキのために泣く場所を作った。


Fin


2007521


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あきゅろす。
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