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君に効く薬


立花様より



紅く染まった頬。
涙で潤んだ大きな瞳。
誘うように、薄く開いた桜色の唇。

あぁ。どんな試練だこれは。
ガナッシュは、嘆いた。


目の前にいるのは、色っぽさ溢れるトキがいるのに、手が出せない。

理由はただ一つ。

彼は、風邪を引いて寝込んでいた。







―――――――――


「風邪を引いたのか?」


学校に、トキが来ていなかったので、リープに尋ねた返事が、風邪を引いているとのこと。

しかも、かなり酷いらしい。
流石に心配になる。


「だったら、ガナッシュが看病する?」


リープの提案に、断る理由などなかった。


早く治って欲しいと思い、風邪薬と桃の缶詰など、消化の良いものを持って、家を訪ねた。

実を言うと、初めてトキの家に来るものだから、ガナッシュは幾らか緊張していた。


リープから預かった鍵を使って、中に入る。
中は暗く、シーンとしていた。
トキがいる部屋に、ノックをしながら、入っていく。


「・・・・・リープ?」


掠れた声が、聞こえた。「いや、俺だ。」

「ガナッシュ・・・!?」


かなり驚いたようで、起き上がろうとしたが、ふらついて倒れそうになった。

身体を支える。


トキの身体は、予想以上に熱を持っていた。
意識も、あまりはっきりしていない。


「無理に起きなくて良いから。
少し寝ていてくれ。」

「でもっ・・・、ガナッシュどこか、行っちゃうの・・・・?」


服の裾を、遠慮がちに掴むトキ。

不安の色が、出ていた。
可愛いと思いつつ、頭を撫でる。


「ちゃんと、いる。
トキが寂しくないように、いるから大丈夫だ。」


看病の為に、準備するだけだと安心させる。


「うん・・・・。
帰らないでね?」


念を押しながら、横になるトキ。

早速、準備に取りかかった。
まずは、薬を飲むためにお粥を作る。
ガナッシュは、料理は出来るので、手際よく作っていく。

味付けも、しっかりと分かるようにつけた。

トキの元に、持っていく。


「熱を下げるために、薬を飲まないと。
少しでも良いから、食べてくれ。」

「えっと・・・・。」


レンゲを持ったまま、止まるトキ。
やはり、食べれないのかと考えていると、上目遣いにこちらを見た。


「甘えちゃ・・・、ダメ?」

「え?」

「ガナッシュに、食べさせて欲しいなって・・・・・。」


最後は本当に、小さな声だったが、はっきりと聞こえた。


「〜〜〜〜〜っ!!
貸してくれ・・・。」


可愛さに悶えながら、レンゲをトキから受けとる。
凄く嬉しそうだ。


「あーん。」


パクリと雛のように食べていく。
美味しいと、笑ってくれる。


「何か、嬉しいな。
こういう風に、看病されるのって・・・。」


トキの言葉の意味に、ガナッシュは気付く。
きっと甘えたことや、こんな風に、看病などされることが少なかったのだろう。

だから、甘えたいのかも知れない。


「よし。これで薬が飲めるな。」


精一杯、甘えさせてやろうと思いながら、片付けていく。

その間に、トキは甘い風邪薬のシロップを飲んだ。

トキに合わせて、ガナッシュが買ってきたものだ。


「後は、寝ておくといい。
眠れるまで、側にいるから。」

「分かった。
ありがとう。」


いつもと違い、弱々しい。
だが、色っぽいので内心、複雑な気持ちだった。

トキは、寝る気配がなくじっとこちらを見ていた。

欲情してしまいそうになるのを、必死で抑える。
相手は、病人だと言い聞かせる。


「ガナッシュ・・・。」


無意識に甘えた声を出しながら、声をかける。


「・・・何だ?」

「すき。」


ごめん、我慢したんだと無意味な謝罪を、心の中でしながら、トキに覆い被さる。

そのまま、キスをした。


「んっ・・・・!
ふぅ・・・・。」


漏れた甘い息。
シロップの甘ったるい味がした。


「お願いだから、寝てくれ。こういうことを、したくなるから。」

「ガナッシュのばか。」


最初よりも頬を染めながら寝に入るトキ。

よく我慢したなと、自分を誉めた。


安らかな寝息をするトキを見ながら、ガナッシュは優しく微笑んだ。


Fin


2007/5/17


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あきゅろす。
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