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Memory






ココ様より






柳said



「危ない!蓮二!!」

最後に聞いたのは、愛おしいお前の声だった。



「んッ・・・」目を開くと、俺はテニス部レギュラー陣に囲まれていた。

「柳君、起きましたか?」

「ここは・・・」白い天井に独特の匂い。

すぐにここが病院だという事が理解できた。

そうか・・・俺は・・・。

「赤也のボールで・・・」

「うぅッ・・・すいませんッ、柳先輩ッ」声のする方を見れば赤也は泣きながら俺に頭を下げた。

「まったく・・・柳になにかあったらどうするんだよぉ」丸井がガムを膨らましながら赤也の頭を小突く。

「まぁ、検査でなんともなかったんだ。あんまり赤也を責めるな」ジャッカルが赤也の頭を優しく撫でる。

「ほんになんともないんか?」

「・・・少し痛みはあるが今の所はなにも」

「それはよかったです」


それにしても・・・俺が最後に聞いた言葉は・・・。

「そういえば真田は?」

「真田君ならご家族に謝罪に」

「そういうのは俺がやるべきなんだろうけどんなぁ・・・」苦笑いを浮かべながら幸村が俺を見つめる。

「幸村・・・真田は」

「・・・・」俺が眉間に皺を寄せれば幸村は目を見開いた。

「柳・・・お前ッ」幸村がなにか言いかけた時、病室の扉が開き誰かが入ってきた。

「蓮二、目を覚ましたのか?」

「あぁ、真田君。今さっき目を覚ましたのですよ」

「そうか、それはよかった。吐き気などはないか?」

「医者・・・か?」俺の一言でその場に居た全員の空気が止まった。

「や、柳、おまん・・・なにを言っとるんじゃ?」

「真田が医者なわけないだろぃ」

「そうっすよ、冗談はッ」

「冗談ではない。医者でないなら誰だ?」

「れ・・・蓮二ッ」

「俺はお前など知らない」


俺の言葉を聞くと真田と呼ばれた男は目を見開き、そして部屋から飛び出して行ってしまった。

「真田!」それを見た仁王と柳生が病室を走って出て行く。

「柳・・・」

「幸村・・・あいつは」

「ほんとに覚えてないのかい?真田弦一郎」

「真田・・・弦一郎・・・・。」


分からない・・・分からないがその名前を口に出すと不思議と胸の奥が痛んだ。

「知らない。俺の記憶にはそんな奴の存在はない」

「そう・・・か」気付けば赤也はジャッカルに抱きついて泣いておりそれを丸井が慰めていた。

「幸村・・・その、真田という男は」

「立海テニス部の副部長」

「副部長・・・?」

そんなはずはない・・・。

立海テニス部の副部長は・・・・。

あ・・・れ・・・・。

「立海の副部長は・・・いない?」

「居ないんじゃない・・・忘れてるんだよ。お前が・・・」幸村の言葉に俺は目を開眼させた。

「冗談も休み休みいえ、俺が忘れるなど」

「でもそれが真実だ・・・。お前は真田の事を忘れた」

「俺が・・・忘れている?」

「そうだよ、真田弦一郎は・・・テニス部の副部長であり、そしてお前の・・・」

「俺の・・・?」

「お前の大切なこッ「友人だ」・・・真田」

聞こえてきた声に俺が振り向くと辛そうな顔をした柳生と仁王と目を赤くさせた真田弦一郎がいた。

「お前は俺の大切な友人だった・・・」

「真田ッ」幸村が顔を歪ませながら真田に近寄る。

「幸村、なにも言うな」真田は幸村にそれだけ言うと俺に近づいてきた。

「忘れてしまったのなら、それでもいい。また初めの関係に戻るまでだ。はじめまして、真田弦一郎だ」

分からない・・・。

なぜ、俺はこいつの事だけ忘れたのだ?

他のレギュラー陣の名前はしっかり覚えている・・・。

なのに・・・なぜ・・・?


あぁ・・・答えは簡単だ。

この真田弦一郎という男は・・・俺にとって不要なものだった・・・。

それだけだ。

「柳、蓮二だ・・・」真田は笑みを浮かべ手をさしだしてきたが俺は握らなかった。

不要なものと手を組んでなにになる。

のちのち邪魔になるだけだ・・・。

「柳ッ・・・」

「幸村、かまわん・・・。蓮二も疲れているんだろう。今日はゆっくり休め」真田が幸村に笑みを浮かべながら首を横に振り病室を出て行き、それに続くようにレギュラー陣が出て行く。

「柳、また明日来るよ・・・」

「あぁ、待っている」幸村は最後、俺を睨みつけるように言って病室の扉を閉めた。


不要なものはいらない・・・。

不要なデータだから俺は真田という男を拒絶した。

それでいい。

それでいい・・・。

それでいいはずなのに・・・・。

なぜ、胸の奥が痛むのだッ・・・・。


俺は拒絶し続けた・・・。

あいつ・・・真田弦一郎を。

見舞いに来ても無視し続け、暴言を吐いた。

何度も幸村に怒鳴られたがその度にあいつは「いいのだ」と笑みを浮かべ幸村を宥めていた。

次の日も・・・次の日も・・・毎日あいつは俺を見舞いに来続けた。

その度に言うのだ・・・・。

「早く記憶がもどるといいな」と。

正直、俺は戻らなくてもいいと思っている。

不要な情報などいらない。

きっと記憶が戻ったとしても俺はこいつのデータはいらない。

こいつの記憶が無くて困った事は一度もなかった。

いるのは有力なデータと情報のみ・・・。

それが参謀と呼ばれる俺だ。


それでいい・・・。

それで。



「蓮二、もう体は大丈夫なのか?」俺は退院した翌日、すぐに部に戻った。

これ以上遅れるわけにはいかないしデータを取らねば全国3連覇を成し遂げられない。

「あまり無理をするな、病み上がりなのだから」

俺はこいつを無視した・・・。

どうせ、こいつの神経なら傷つきなどしない。

あの哀しそうな表情を見せたの俺が「誰だ」と言ったあの時だけ。

その後のこいつはいつも笑顔を浮かべていた。

よっぽどの馬鹿なのかMなのか・・・。

どっちにしても気持ちが悪い。

男に付き纏われる趣味は俺にはない。

ましてや、不要なこいつになら尚更だ。


「柳・・・」

「幸村、どうかしたか?」

「話があるんだ」幸村は俺を睨みながら俺の手を引っ張り無理矢理部室へと連れていった。


「幸村、俺達には時間がない。早くデータを纏めねば・・・」

「君、なにをしてるかわかってる?」幸村は俺の言葉を遮るように話はじめた。

「なにを、とは?」

「真田のことだよ。なんであんな態度をとるの?」

「あんな態度・・・、あぁ・・・それは俺があいつを必要ないと判断したからだ」

「ッ!必要ないってッ!真田は全国3連覇を成し遂げるには欠かせない存在だ!」

「あいつのテニスの実力は認めている。たしかに俺でも刃が立たない。しかし、必要ならば俺の記憶からあいつだけが消えるはずはない・・・そうだろう?」

「ッ・・・必要でも、記憶が消えることはあるよッ・・・お前みたいにあいつを!」

「あいつに近寄られると正直気持ちが悪いんだ。それにあいつに蓮二と呼ばれると・・・虫唾が走る」俺が幸村を見つめて言えば俺は殴り飛ばされていた。

「ッ・・・さな・・・だッ」

幸村にでは無く、不要な真田弦一郎に・・・。

「ッ・・・すまなかったッ・・・。俺は気付いてやれなかったんだッ、今まですまなかった。もう必要な時以外近づかないしッ、もう蓮二とも呼ばないッ・・・だからッ・・・嫌わないでくれッ」涙を流しながら俺を見つめる真田に俺の胸はキツク締め付けられているような気がした。

「真田ッ・・・」

「幸村もッ・・・すまなかったなッ」真田は幸村に頭を下げると部室から走って出ていった。

「嫌うな・・・か。あいつはなにを言っているんだ」

「真田はッ・・・それだけお前が好きなんだよッ」

「幸村・・・?」

「真田が駄目っていうから手出しも口出しもしてこなかった・・・。けど、もう限界だよッ」気が付けば俺は幸村に胸ぐらを掴まれて床に押し倒されていた。

「もう我慢の限界ッ・・・なんで何も思い出しも思い出そうともしないお前に真田を悪く言われなくちゃいけないんだよッ!虫唾が走る?その言葉そっくりそのままお前に返すよ!」

「ゆきッ・・・」幸村は俺に何も言わせないとでもいうように俺の首に手を当て俺を睨みつける。

「真田が・・・、真田が今まで傷つかなかったとでも思ってた?あいつ、俺達に心配させないように隠れて泣いてたんだよッ・・・いつも俺達には笑って見せて、影ではお前の名前呼んで泣いてたんだよ!」幸村の言葉に俺が目を見開くと幸村は俺の首から手を離し立ち上がり俺を見下ろした。

「これ以上真田を傷つけるなら・・・俺はお前から真田を奪いとる」幸村はそれだけ言うと走って部室から出て行った。

俺から・・・真田を・・・?

意味が分からない。

俺と真田は無関係で・・・・。


―・・・を泣かせたりしたら俺が奪うからね―

―安心しろ、そんな事一生ありえない―

なんだ・・・この記憶はッ・・・

「真田・・・弦一郎・・・?」


気が付けば、俺は部室から飛び出していた。



真田said

―弦一郎、お前のことが好きだ―

―お、俺もッ・・・お前の事が好きだッ―


幸せな記憶・・・。

俺とお前が付き合い始めた時の記憶・・・。


俺は蓮二が好きだった。

けど、伝えられないまま3年の月日が経って・・・。

あの日・・・想いがつながった。



俺は、蓮二にどれだけ突き放されても暴言を吐かれようと構わなかった。

蓮二と呼べるのが・・俺の特権だったから。

あいつの名前を呼べるだけで、俺は構わなかった。

俺だけでも蓮二と繋がっている気持ちになれたから・・・。

けど・・・もうそれすらも・・・断ち切られた。

気付けば俺は蓮二を殴って部室を飛び出していた。

「最低ッ・・・だな」

蓮二ではない・・・。

俺自身が最低なのだ・・・。

蓮二の気持ちにも気付けず蓮二を困らせ、最後には殴ってしまった。

嫌わないでくれと言っておいて嫌われるような行動をしてしまった俺は馬鹿としか言いようがない。

「ッ・・・れッ・・んじッ・・・」女々しい、今の俺に合う一番の言葉だ。

最近の俺は誰もこないこの場所で涙を流すのが日課になっている。


こんな場面を見られたら、きっとまたお前に気持ち悪いと言われるのだろうな。


けど・・・もう限界なのだッ・・・。

もう・・・お前に無視されるのも、暴言を吐かれるのもッ・・・辛いのだッ・・・。


「ッ・・・うわぁあッ・・蓮二ッ・・・いやだぁあッ!」

もう1度でいい。

もう1度だけ、お前に振り向いてもらいたいッ・・・。

もう1度だけお前を蓮二と呼ばせて欲しかった。

もう1度だけお前に・・・弦一郎と呼んで欲しかった。

もう1度・・・もう1度・・・。


そう願ってしまう俺は・・・わがままなのでしょうか・・・。




「真田・・・」気付けば俺の後ろには幸村が立っていた。

「ッ・・・幸村ッ」俺は慌てて涙を拭いた。こんな場面見てもらいたくなかった。

「真田・・・もう我慢しなくていいんだよ。泣きたいなら泣いていいよ。俺はもう辛い顔をする真田をみたくない」そう言った幸村は俺に近付き、そして・・・俺を抱きしめた。

「ゆき・・・むら・・・・?」

「ねぇ・・・辛いなら辛いって言っていいんだよ。君だけが我慢することないんだ」幸村の言葉に俺は気づかぬうちに止めたはずの涙を再び流していた。

「お、れはッ・・・辛くなどッ」

「辛くないならどうして泣いているの?どうしてそんなに体を震わせているの?」幸村の言葉に俺はなにも言い返せなかった。

「我慢なんてしちゃ駄目だよ・・・俺には話して」心地の良い幸村の声と体温に俺はゆっくりと目を閉じた。

「ッ・・・辛いッ・・・のだッ。蓮二は付き合う前から俺を嫌っていたのではないかと・・ずっと考えていたんだッ・・・もしかしたら蓮二は俺の記憶を失う事を望んでいたのではないかと、だから赤也のボールが頭に当たったあと、俺の記憶が無くなったのではと」

「真田は柳の記憶戻ってもらいたい?」

「ッ・・・戻ってくれるのならッ、戻ってもらいたいッ・・・。もう1度俺を見てほしいッ、もう1度蓮二と呼ばせてもらいたいッ・・・もう1度・・・弦一郎と呼んでもらいたいのだッ・・・そのあとならッ、嫌われてもかまわないッ・・・」

分かっている・・・。

我儘なことくらい・・・。

けど・・・そう願わずにはいられなかった・・・。





「だってよ、柳・・・」

「え・・・?」その言葉に俺が振り向けば息を荒らげた蓮二が立っていた・・・。

「れんッ・・・柳ッ」

「2人で話しなよ。俺が手伝うのはここまでだ・・・・」幸村は俺の耳元でそう言うと柳の方に歩いていき何かを囁くと柳を殴って歩いていった。

「れッ・・・柳!」俺が走って近付けば蓮二は頬を押さえて立ち上がった。

「だ、大丈夫か?頬が腫れてッ、今なにか冷やす物を!」俺は慌てて蓮二の頬を見るとアタフタしながらも水道に走っていき持っていたハンカチを濡らし、蓮二の頬に当てた。

「すまないッ・・・」俺が蓮二の頬に手を当てると蓮二は眉間に皺を寄せ、俺は慌てて謝って手を離した。

「なぜ謝る・・・」

「え・・・?」いきなりの蓮二の言葉に俺は目を見開いて蓮二を見つめた。

「お前はなにも悪くないのに・・・なぜ謝る?」

「ッ・・・お前が殴られたのは俺が原因なのだろ?」

「けど、お前が幸村に俺を殴れと言ったわけではない」

「それでも、元の原因は俺でッ!」

「そういう所が嫌いなんだ!!」いきなりの蓮二の声に体が震えた。

「お前の、そういう全て自分が悪いと思うところが・・・俺は嫌いなのだ」

あぁ・・・面と向かって嫌いと言われると・・・やはり辛い・・・。

「すまなかった・・・」

「また謝る・・・」

「ッ・・・」

蓮二の言葉に俺はなにも言えなかった。

気付けば、蓮二が記憶を無くしてから俺は謝ることばかりだった・・・。

「謝る以外の言葉を忘れたか・・・?弦一郎」


俺の心臓が一瞬止まったような気がした・・・。

「や・・・なぎ?」

「はぁ、お前は俺の呼び方も忘れたのか?弦一郎」

「なッ・・・でッ・・・」

「弦一郎・・・一度だけではない、何度でも呼んでやる」蓮二は優しく笑みを浮かべて俺を抱きしめ優しく囁いた。


「れッ・・・んじッ・・・蓮二ッ!」気付けば俺はボロボロと涙を流しながら蓮二に抱きつき、そして蓮二も涙を流しながら俺を抱きしめてくれた。

「すまなかった・・・弦一郎。辛い思いをさせてしまったな・・・・」

「蓮二ッ・・・」

「たくさん傷つけたな・・・」蓮二は俺の頭を優しく撫でそして唇にキスをした。

「辛かったッ・・・蓮二がッ・・・蓮二が蓮二じゃなくてッ・・・俺は捨てられたんだとッ・・・お前の心に俺はいらなかったんだとッ」

「弦一郎・・・違うんだ。俺はお前をいらないなんて思ったことはない。それどころか居てくれないと俺は俺でいられなくなる。お前が必要すぎて、お前を考えすぎて・・・記憶を無くしてしまったんだ・・・」

「蓮二ッ」蓮二の言葉に俺は笑みを浮かべそして、自分から口づけをした。

「弦一郎ッ・・・お前の事が好き・・・いや愛おしい」

「俺もッ・・蓮二が愛おしいッ」

「もう、忘れはしない・・・必ずに」

「約束だ・・・蓮二」


そして俺達は約束の意味を込めて、もう1度キスをした。

お互いの存在を確かめ合うように深く・・・深く・・・。


















「俺も随分なお人好しだよ・・・。ま、今度泣かしたりしたら問答無用で真田の事奪いとるけどね」木に寄りかかり腕組みをして笑み浮かべていた幸村が見ていたとも知らずに。


「弦一郎・・・」

「蓮二・・・・」


「「愛してる・・・・」」


END


猫李ちゃんが考えてくださいました素敵なおまけ♪

「さて、柳・・・。明日から一週間真田禁止令を発令する」

「げ、弦一郎禁止令?」

「そうだよ、明日から一週間真田と話しても真田に触っても駄目」

「冗談だろ?」

「本気だよ。今まで真田の事散々傷つけたお前への罰だ」

「・・・・・」

「・・・でも、俺は優しいから明日1日だけで許してあげる」

「幸村ッ!」


次の日

「幸村!蓮二がまた俺の事を無視をするのだッ!」

「可哀想に、ほら俺のところにおいで」

「幸村―ッ!!」

「てへっ♪」



END

ちょっと付け足したりしました←





あきゅろす。
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