約束
ココ様より
2年のあの日、俺はお前に約束した。
「弦一郎、俺はお前が好きだ」
「れ、蓮二ッ・・・俺は・・・」
「お前の気持ちは分かっている。幸村が」
「な、なぜ幸村がでてくる?」
「お前は幸村を好いているのだろう?幸村もお前が好きだ」
「ちょ、ちょっと待て!俺は幸村が好きだが、恋愛感情では・・・んッ」俺はお前の答えを聞く前に唇を塞いだ。
「俺は、お前が幸せならそれで」
「ッ・・・たるんどるッ!が、学校で接吻などッ」お前は顔を赤くさせて俺を睨んだ。
「もうしない。幸村と幸せにな」俺はお前の頭を撫でて屋上を出て行くはずだった。
「待てッ・・・」お前は俺の制服を掴み俺の唇にキスをした。
「お前はッ・・・いつも俺の話を最後まで聞かず、データで俺の話をすべて終わらせるッ・・・俺は幸村が好きだが恋愛感情ではないッ。それに・・・一番好いてるのはお前だ・・・蓮二」
データでは、人の心を読むことはできない。貞治もそういえば言っていたな。
「弦一郎・・・」
「俺はッ・・・お前が好きだッ」強く俺に抱きつく弦一郎は顔を真っ赤にして俺を離さんとばかりに制服を握りしめた。
「弦一郎、すまなかった。その・・・いきなりキスを」
「もう、学校ではせんぞ」
「あぁ、わかっている。弦一郎・・・」
―なにがあっても、お前を守る。―
約束
「蓮二、遅くなってしまってすまない。ん?なにを笑っているのだ?」
「弦一郎、10分26秒の遅刻だ」
「す、すまない」俺が時計を見せて言うと弦一郎はすまなそうに頭をさげる。
「ふっ、冗談だ。さっき笑っていたのは昔を思い出していたんだ」
「昔?」
「あぁ、俺が告白した時の事だ。弦一郎が俺にキスして」
「い!言うなッ!」
「顔が真っ赤だぞ?弦一郎」俺が笑いながら頬を撫でると弦一郎は俺を睨む。
「うるさいッ、それより今日はどこへ行くのだ?」今日で付き合いだして365日、時間で計算して31536000秒、つまり付き合って1年目の記念日だ。
「あぁ、知り合いに遊園地のチケットを貰ってな。乗り物も乗り放題だから丁度いいと思ってな」
「遊園地か・・・小1の時以来行っていないな」
「修学旅行では行かなかったのか?」
「祖父にくだらないと言われて行かせてもらえなかった。その間は道場で剣の修行をしていた」
「そうか。では今日は楽しい1日になるといいな」弦一郎の手を握ると弦一郎は一瞬目を開き、恥ずかしそうに俺の手を握り返した。
「まわりから変な目で見られるぞ?」
「別に弦一郎が居てくれればかまわない」
「た、たわけッ・・・」
「弦一郎、なにか乗りたいものはあるか?」遊園地に入ると休みのせいか家族連れやカップルで賑わっていた。
「俺は良くわからん。お前に任せるから蓮二の好きな所へ連れて行ってくれ」
「あぁ、わかった」俺は笑みを浮かべて弦一郎の手を引っ張り歩きだす。
「れ、蓮二ッ・・・な、なぜここなのだ?」
「なんだ?弦一郎。もしかして怖いのか?」
「こ、怖くなどない!ゆ、幽霊など、ひ、非現実的だッ。つ、作り物になど驚きはせんッ」お化け屋敷に入ると弦一郎は思った通りの反応を見せてくれた。
「そうか?では手を離してくれないか?さっきから痛い」
「うッ・・・」弦一郎は俺の言葉を聞き渋々手を離すと丁度お化けが出てくる。
「わぁあああッ!!」
「ひッ!!うぁッ」声を上げ体を震わせながら弦一郎が俺に抱きつく。うむ、予想以上の反応だ。
「れ、蓮二ッ・・もッ、怖いのだッ」泣きはしないものの俺に抱きついてくる弦一郎は可愛い。
「大丈夫だ、弦一郎。もう出口だ」俺は弦一郎の背を撫でながらお化け屋敷を出て行く。
「やはり怖かったのだな」弦一郎をベンチに座らせると俺は買ってきた飲み物を渡す。
「うっ・・・」
「そういえば、昔幸村と3人でホラー映画を見たとき一人でトイレにいけなくなっていたな」
「むッ、昔の話だ!」
「今回は病院が舞台だったから病院に一人で行けなく」
「たわけッ!もうそんな歳ではないッ」
「ふ、そうか。ではもう1回入る」
「やめてくれ、もうあんな所へは行かん」少し拗ねながら弦一郎が俺から目線を逸らす。
「蓮二、さっきから俺はからかわれている気がするのだが」からかわれている気がしているのでは無くからかっているのだがな。
「そんなことはない。だから安心しろ」俺が笑みを浮かべ優しく頭を撫でる。
「そうか?ではよかった」安心したように弦一郎が笑みを浮かべる。鈍いにもほどがあるな。
「ほら、弦一郎。遊べる時間は限られているから行くぞ?」
「あぁ、わかった」頷き立ち上がる弦一郎の手を再び握りしめると俺達は歩きだす。
「楽しかったな、弦一郎?」
「お前に着いていくと言った俺が馬鹿だった」
「お化け屋敷の次にジェットコースターに乗り次にフリーフォール、次にまた別のジェットコースター、なにか問題でもあったか?」俺は少しニヤケながら弦一郎を見つめ首を傾ける。
「大ありだッ。お前、俺が絶叫系が嫌いなのを知っていながら」
「まぁ、たまにはいいじゃないか。楽しかっただろう?」
「楽しくないわけではなかった」頬を赤くさせ恥ずかしそうに弦一郎が俯く。
「素直になれ」
「う、うるさいッ」
「弦一郎、最後に乗りたいものがあるのだが」
「絶叫はいかんぞ」
「大丈夫だ、絶叫ではないから安心しろ」
「そうか、では行くか」俺と弦一郎が目的の場所へ行こうと歩き出すと周りが騒がしくなり始める。
「なんだ?」俺と弦一郎が騒ぎのする方をみると男がこちらに走ってくる。
「退け!邪魔だ!」
「その人強盗です!!」鞄を捕られたであろう女性が叫ぶと俺は男にぶつかりそのまま首に腕を回され人質になるはずだった。
「せいッ!!」首に腕を回される瞬間、弦一郎が男の腕を掴みそのまま足をかけ男を押し倒した。
「蓮二、怪我はないか?」
「あ、あぁ、大丈夫だ」
「くっそぉ!」押し倒された男がポケットからナイフを取り出し弦一郎の首に当てる。
「弦一郎!」
「ッ・・・」
「騒ぐなよッ・・・」男が周りを睨みながら立ち上がると弦一郎の首に腕を回し首筋にナイフを当てる。
「やめろッ・・・こんな事しても貴様は逃げられん!」
「黙れ!」
「弦一郎、むやみに刺激するなッ」気づけば周りは野次馬で溢れ、さすがにナイフがあるためか警備員も無闇に男に近づけずにいた。
「なにか・・・手は・・・・」
―なにがあっても、お前を守る。―
「そういえば・・・お前と約束したな。俺はいつも守られてばかりだ」
俺は弦一郎を守る。
「蓮ッ・・・二ッ」首を締められ苦しそうに弦一郎が俺を見つめる。
今助けてやる。
「どけ!退かないとこいつ殺すぞ!」
「落ち着け!落ち着くんだッ」
「うっせぇ!もういい俺はこいつを・・ゴフッ!」その一瞬、誰もなにが起きたのかわからなかった。一瞬飛んできた何かにより怯んだ男を弦一郎がすくい投げをした。
「か!確保ー!」倒れた男を警備員が取り押さえ俺は弦一郎を抱きしめた。
「れ、んじ?」
「弦一郎、無事でよかった」
「お前がッ・・・」俺はたまたま近くにあった店でラケットを借り石を男に打ち付けたのだ。
「君、大丈夫かい?」警備員が俺達の元へ駆けつける。
「はい。大事には至りませんでしたので安心してください」弦一郎が頭を下げる。
「そうか、それはよかった。安心したよ」警備員が笑みを浮かべるとそのまま男を連れて行く。
「蓮二、よくラケットなんてあったな」
「あぁ、たまたま見つけたんだ」
「そうか、それはよかッ」弦一郎が笑みを浮かべて俺を見つめるといきなり膝から倒れこみ俺はそれを支える。
「弦一郎?」
「す、すまない。変だなッ・・・いきなり」体を震わせる弦一郎を俺は無理矢理引っ張り目的地へむかった。
「かん、らんしゃ?」俺は弦一郎を目的地、観覧車に連れてくるとワゴンの中に乗り込み弦一郎の横に座る。
「ここなら、俺以外見ていない」
「蓮二ッ・・・」
「俺は外をみているから、大丈夫だ」そう言うと俺は外を見つめる。
「蓮二ッ・・・こわッ・・・かったッ・・・」弦一郎は俺に抱きつき体を震わせて泣いた。
「蓮二ッ、ギュッてしてくれッ」
「わかった」俺がゆっくり弦一郎の方を向き強く抱きしめると弦一郎は俺の胸元に顔を埋める。
「怖かったッ・・・怖くてッ、体が震えてッ・・・」
「弦一郎、すまない。お前は俺のせいで人質に・・・」
「ッ・・・守りたかったのだッ、ただ蓮二の事をッ」
「俺はお前に告白した時、約束した。なにがあっても守ると・・・しかし、怖い思いをさせてしまったな」俺は悔しさに唇を抱きしめながら弦一郎を強く抱きしめて悔やんだ。
「なにを言っているッ、蓮二はッ・・守ってくれたッ、俺をあの男からッ」涙を流しながら俺を見上げる弦一郎。
「弦一郎ッ・・・」
「蓮二ッ・・・・蓮二はいつも俺のヒーローなのだッ」泣きながら笑みを浮かべる弦一郎に俺は優しくキスをした。
「んッ・・・ふぁッ・・・」
「弦一郎、これからも、お前を俺に守らせてくれるか?」
「当たり前だッ、俺は蓮二以外に守られたくないッ」
「弦一郎ッ・・・」俺はもう1度弦一郎にキスをした。
約束と誓いの意味を込めて・・・優しく・・・
「愛している、弦一郎」
「俺もだ、蓮二ッ・・・」
END
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