True Self
ココ様より
「むかつくんだよッ!」テニス公園で何人もの男の子が一人の男の子を虐め始める。
「ッ・・・」痛いとも言わず顔を歪ませただ耐える男の子。
「なんか言えよ!」男の子が男の子を突き飛ばす。
「・・・」ただただ男の子は自分を虐める男の子達を睨みつける。
「お前生意気なんだよ!」
「しゃべれねぇんじゃねぇの!?」
「気持ちわりぃ!」
「お前達、なにをしている?」いきなりの言葉に男の子達の体が跳ねる。そして、同い年くらいと分かると安心したように笑みを浮かべる。
「お前、だれだよ?」
「こちらが質問している。この子になにをしている?」
「見てわかんねぇのかよ?ストレス解消だよ」
「ストレス解消?」
「そうそう、こいつ、そういうのにしか使えねぇから。俺達が有効活用してんだよ」
「有効活用とは普段使っていないものを生かして利用するということだ」
「は?」
「人に使うなら適材適所が正しいな。人の能力・特性などを正しく評価して、ふさわしい地位・仕事につける事をいう」
「な、なんだよ・・・こいつ」
「神奈川第一小学校、6年2組笹山英文。親が医者。テニスの腕は中の小」
「お、おいッ」
「同じく神奈川第一小学校、6年3組三井圭太。父親がこの地区の議員。テニスの腕は同じく中の小と言った所か?」
「な、なんだよ、こいつッ!きみわりぃ!」男の子の言葉に顔を真っ青にしながら男の子達が逃げていく。
「大丈夫か?」
「・・・余計なことを」男の子は眉間に皺を寄せ黒い帽子を被る。
「助けてもらっておいてその言い方は良くないと思うぞ?」
「俺は貴様など知らんし助けてくれとも言っていない」
「俺はお前を知っているぞ」
「・・・・・」
「真田弦一郎、テニスの腕は上の上。趣味は剣道、それから」
「お前は・・・誰だ?」男の子の言葉を遮るように真田は男の子を睨みながら首を傾ける。
「秘密だ。どうせ近いうちに会うことになる」
「・・・」
「それではな」男の子は笑みを浮かべながら真田に手を振り公園を出て行く。
「なんだったのだ・・・・?」
これが、俺とあいつの出会いだった。
昼下がり、柳と真田は屋上にいた。
「弦一郎、なにをぼーっとしているんだ?」
「ん?あぁ・・・お前と出会った時の事を思い出していたんだ」
「出会った時・・あぁ、テニス公園か」
「あの時はこんな仲になるなどと思っていなかった」
「そうか?俺はおまえと出会った時からこうなる運命だとわかっていたぞ?」柳は笑みを浮かべながら真田の手を握りしめる。
「た、たわけがッ」真田が手を握りかえしながら頬を赤く染める。
「弦一郎は本当に可愛いな」
「な!なにを言ってる!」
「本当の事だ」柳が笑みを浮かべながら真田の唇にキスをする。
「ッ!ここは学校だ!たるんどるにもほどがあるッ!」柳のいきなりの行動に目を見開き柳を突き飛ばす。
「弦一郎はいつまで立っても恥ずかしがり屋なのだな」
「うるさいッ!・・・・ッ」顔を真っ赤にしながら立ち上がるが顔を歪ませて足を押さえ座り込む。
「弦一郎!どうした?」慌てて柳が真田の足に手を伸ばすが真田がそれを拒み立ち上がる。
「なんでもない、少し痺れただけだ。もう治った。」
「本当か?」
「あぁ。ほら、そろそろ行かないと次の時間遅刻するぞ」
「そうか、わかった」柳は少し腑に落ちないと顔をしながら真田に着いて屋上を後にする。
―弦一郎、お前はなぜ、俺に隠し事をする?どうして俺を・・・頼ってくれぬのだ?―
「真田先輩、今日の放課後柳生先輩が委員会の仕事で頼みたいことがあるそうです!」2年の男が笑みを浮かべながら真田に近づく。
「今日の放課後か・・・」
「はい、今日は部活ありませんよね?・・・なにかご都合がありましたか?」
「いや、大丈夫だ。問題ない・・・しかし、なぜ柳生は直接言ってこないのだ?」
「柳生、手伝いとはなんだ・・・?」真田が呼び出された使われていない教室に入ると眉間に皺を寄せすぐに状況を理解する。
「ほんとに信じてきちゃったよ、真田」
「ま、あぁでもしなきゃ真田は俺達の呼び出し無視するからな〜」
「そういうことか・・・」教室の端の方で震える自分を呼び出した2年の男子に一瞬笑みを浮かべると真田が男達に近づく。
「正々堂々と呼び出したらどうだ?」
「だから、正々堂々呼び出したらお前無視すんだろ!」近づいてきた真田の頬を男が殴り真田が床に倒れる。
「ッ・・・」真田が男を睨むように見上げる。
「その目、気に入らねぇんだよ!!」その言葉と共に他にいた男達も真田を殴り、蹴り始める。
「一人ではッ・・・なにもできぬくせにッ」真田はボロボロになりながら痛みに耐える。
「あッ・・・うぁッ・・・うわぁあああ!!」その様子を見ていた2年の男が走って教室から逃げていく。
「おい!あいつ放っておいていいのかよ?」
「大丈夫だろ、どうせ先公には言わねぇよ。それに言ったとしても俺の親がもみ消してくれるって」
「さすが悪徳議員の息子」
「寄せって。なぁ、真田・・・お前のその態度、小学校の時から気に入らなかったんだよ」
「そうそう、その澄ました態度とか俺らいつもイライラしてたんだよ」
「それは、お前らが俺をどう思おうと勝手だがッ・・・迷惑だッ」
「あれ?そんな態度とっていいの?バラしちゃうよ?お前らの秘密」
「ッ!」
「喋ったら、柳がどんな目で見られるかな〜」
「柳は関係ないッ!」
「自分よりあいつが大事なのかよ?じゃあ、自分の人生とあいつ、どっちをとる?」男がニヤつきながら野球のバットを手に取り真田の右腕を軽く叩く。
「ッ・・・」
「俺は柳なんかより自分が大事ですって土下座して言えよ、そしたらやめてやる」
「そんなたわけた事、誰が言うことか。お前らのような餓鬼にそんな姿見せられるか」
「ッ!ふざけやがってぇ!!」男がバットを振り上げ真田の腕を思いっきり殴る。
はずだった・・・・。
―ガッシャーンッ!!―
バットが真田の腕に降りる寸前、男の頬に何かが掠り窓を突き破りガラスが割れた。
「ッ!」
「随分と、面白いことをしているな」
「ッ・・・柳ッ」
「れん・・・じ?」
「次は容赦などせず顔を狙うぞ」
「良いのかよ?お前、テニス部退部どころか学校辞めさせられるぞ?」
「それがどうした?」
「俺の親父に言えば、お前の生活壊すことだって!」
「そういえば、お前の父親は議員だったな・・・いや、間違えた。元議員だったな。」柳が笑みを浮かべながら男達を見つめる。
「なに言ってんだよ、お前」
「テレビ、見てみたらどうだ?世間は面白いことになっているぞ?」
「な、なんだよ」男は少し慌てながら携帯のテレビをつけ、そして顔を真っ青にする。
―不正献金、悪徳議員の正体―
「お、おい!大丈夫かよ!」
「お前の家は医者だったな・・・お前らの生活、ズタズタになるだろうな」
―悪徳医師、悪徳議員書類送検―
「俺のデータと人脈を侮ってもらっては困るな」柳は笑みを浮かべながら腕を組み男達を見つめる。
「おい、今ものすごい音したぞ」先程のガラスが割れた音で学校に残っていた生徒達が集まり始める。
「ボロボロな弦一郎とバットを持っているお前ら・・・こいつらはどう思うだろうな?」
「ちょっと!真田君、ぼろぼろじゃない!」
「寄ってたかって最低だな!」
「弦一郎・・・大丈夫か?」柳がゆっくり真田に近づき立たせると柳の手を振り払う。
「ッ・・・こんなもの、平気だッ」
「弦一郎、来い」柳が真田の手を引っ張り屋上に向かう。
「ッ、いきなりなんだッ・・・それになぜお前がまだ居る?今日は一緒に帰れないと言っただろうッ」
「あぁ、約束していたデートを断られたな。だが、帰る途中に柳生と仁王に会ってな、もしかしたらと学校中を探していたら2年に助けを求められた」
「・・・あいつが、俺の事など放っておけばいいものを」
「弦一郎、いつからだ?あいつらからの暴力は」
「小学校の頃からだ。お前に助けられたあとも続いていた・・・中学に入ってからもな」
「ッ・・・なぜ俺に相談しなかった」
「あんな子供じみた事、一人でなんとかできた」
「子供じみた事?・・その子供じみた事でお前はテニスが出来なくなる所だったんだぞ!」
「・・・・」
「弦一郎、なぜお前はいつも頼ってくれない?俺はお前のなんなのだ?」
「ッ・・・蓮二は、俺の・・・」
「恋人ではないのか?そう思っていたのは俺だけなのか?」
「違うッ!!・・・ッ、逆らえば、俺とお前の関係を言うと、脅されていたのだ・・・。もし、関係がバレたら、蓮二は周りから変な目で見られてしまう。それだけがイヤだったのだ・・・」
「弦一郎・・・お前はバカだ」真田の言葉を聞いた柳が真田を強く抱きしめる。
「お前が居れば、俺は周りからどんな目で見られようが関係ない・・・」
「蓮二ッ・・・」
「弦一郎、俺はお前が居なくなるほうがよっぽど恐ろしい。だから、もう一人でなんでも解決しようとするな」
「ッ・・・蓮・・・二ッ・・・」柳の言葉に真田の体が震え始めると柳の胸元に顔を埋める。
「怖かったッ・・・誰にも言えずッ・・・怖かったのだッ・・・」
「もう大丈夫だ・・・もうなにも恐い物はない」柳はそんな真田をただ優しく抱きしめ頭を撫でる。
「俺が、お前のすべてを守るぞ。弦一郎・・・」
翌日
「あいつら、学校をやめたらしい」
「そうか」
「蓮二、なにをしたのだ・・・?」
「弦一郎は知らないほうがいい。だが、あいつらはそれだけの事をしたんだ・・・(黒笑)」
END
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