想いの距離
梨音様より
俺という闇の中に現れた
君という一筋の光
この想いを、
君は受け止めてくれますか?
─想いの距離─
キーンコーンカーンコーン
始業を告げるチャイムが鳴り響き、生徒達が教室内に入っていくなかで、一人、廊下をボーッと歩いている少年がいた。少年の名はガナッシュ。
なぜガナッシュがボーッとしているかというと、想い人の少年、フィーノの事を考えていた。
仮にも男であるガナッシュは、同性であるフィーノにこの想いを打ち明けるべきかと考えていた。
この想いを打ち明けたら、フィーノに嫌われてしまうかもしれない‥‥
そんな事を考えながら、あてもなく歩いていると、ガナッシュはいつの間にか中庭に居た。
(あぁ…この場所は考え事には最適だな‥‥)
そう思い、ガナッシュは日陰を探して再び歩き始めた。
すると、
「フロー!帽子返してってば〜!!」
愛しい、彼がいた。
だが、フィーノは一人で居た訳ではなく、常人では見えない精霊達と一緒に居た。
精霊達はガナッシュに気付くと、瞬く間に消えてしまった。
「あれ…?皆…?」
消えてしまった精霊達にフィーノが首を傾げていると、ガナッシュは静かに近づいた。
「フィーノ‥‥」
「あ!ガナッシュ!どうしてここに?」
フィーノがいつもの笑みを向けると、ガナッシュも微かに笑みを浮かべる。
「ちょっと、考え事をな‥‥フィーノは?」
二人きりのこの場所に、ガナッシュは少しドキドキしながらもフィーノと再び話し出す。
「それは‥‥」
ガナッシュの問いに、フィーノはいつもとは違う、雰囲気を纏う。
「教室に行くより‥‥誰も居ない、静かな場所で…精霊達‥‥家族達と居る方が、安心するから‥‥‥」
フィーノは切なげな笑みを浮かべ、ガナッシュを見上げた。
そんな、フィーノを見た瞬間、ガナッシュの心の中の、なにかが外れ、
そして、
気が付けば、
抱き締めていた。
「ガ、ガナッシュ…?!」
「好きだ‥‥」
「えっ?!」
ガナッシュの言葉に、思わず耳を疑うフィーノ。
「俺は…フィーノの事が好きだ。君の事を独りになんかしないし、必ず、幸せにする‥‥だから‥」
ガナッシュは真剣な眼差しでフィーノを見つめる。
見つめられると、フィーノの頬は赤くなった。
そして、躊躇いがちに口を開く。
「あの‥‥ガナッシュ…‥僕ね‥‥その…まだ、好き…とか、わかんなくて‥‥‥」
だから…、と言いよどみ、フィーノは俯いた。
「待つよ‥‥」
「え?」
ガナッシュの言葉に、フィーノは顔を上げる。
そこにあったのは、優しい笑みを湛えたガナッシュの顔だった。
「フィーノが、俺を好きになってくれるまで…いつまでも待つから‥‥」
「ガナッシュ‥‥」
フィーノが名を呼ぶと、ガナッシュはどこかふっきれたような笑みを浮かべていた。
「一緒に、教室に行こう?」
「うん!」
ガナッシュの言葉に、フィーノは笑顔で頷く。
そして、二人は仲良く手を繋いで教室に向かう。
俺の、大切な光
君の心までの距離はまだあるけど
いつか、きっと
この想いが君に届きますように‥‥
end
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