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旭は困惑したような顔で俺を見ていた。それもそうだろう、だって旭は話を聞いて欲しかっただけなんだもんな。わかってる、俺自身、困惑している。

ごめん、旭。
そんな顔させたい訳じゃないのに、いつも笑って欲しいと思ってるのに……なんでだろう、弁解の言葉が出て来ない。


「………こうさん、」


痛い程の沈黙を破ったのは旭。


「な、んだよ……」


「こうさん、あのね―――」


何かを言おうとしていた言葉を遮ったのは、滅多に鳴らない俺の携帯。

俺は慌てて誰から掛かってきたのか確認する。


―――――涼也だ。


俺は旭から離れて台所へと移動した。旭には、セフレとも言える涼也の存在を知られたくなかったから……





「なんの用だよ、涼也」


必然的に声が小さくなる。


『なんだ? ご機嫌斜めだな』


くつくつと涼也の笑い声が電話越しから耳元に響く。


「うっさい、用件を言えよ」

『本当に機嫌悪いな。…まぁいい、今からオレの家に来いよ』

「はぁ?! 今からぁ?!」

思わず荒げた声を再び抑え問う。


「いきなり……何だよ」

『……別に、逢いたくなっただけだ。―――来るのか来ないのか、早く決めろ』


ふてぶてしく言い放つ涼也に思わず苦笑した。
だけど逢いたい、だなんて殊勝な事も言えるんだと思うと少し可笑しい。
それに、この苦痛にすら感じる部屋から出て行ける。そんな風に考えてしまったんだ。

俺はわざと大袈裟にため息を付いた。


「仕方ないから、行ってやるよ」

『……そうか』


酷く、安堵した声が涼也から洩れたのが解った。それが涼也らしくなくて、俺は再び問い掛けた。


「なぁ、本当にお前、どおした――」

『じゃあ、待っているからな』


問いは答えられないまま、ぷつりと通話が切れそのまま無機質な音が響きわたる。そんな状態に俺は、眉をひそめたまま携帯を閉じた。


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