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そんな衝動にじっと耐えてた俺に、沈黙の態度だととったのだろう、慌てたように謝ってきた。


「こうさん、本当にごめんなさい」


旭のその必死な様子にくつくつと自然に笑いが漏れた。


「―――お前、」
「?」


怪訝な表情をしている旭に勇気を出してとん、と肩を寄せ下から旭の顔を見上げた。


「謝らないんじゃ、無かったのか?」


この前、去り際の旭の台詞を揶揄ってみる。
そして怒ってないから、だからもう謝るなよ、そんな意味を込めて笑った。

唖然。
まさしくそんな顔で俺の顔を凝視していた旭は、俺の手を離すとボゥルへと視線を落としおもむろに挽き肉をかき混ぜ始めた。


「あー、もうっ!!そんな顔してるとハンバーグと一緒に食べちゃうよっ!!」

「な、何だよいきなり。……俺焼かれるの嫌だぜ?」


ちらりと覗きこんだ旭の顔は揶揄された羞恥なのか何なのか真っ赤になっていた。それに気付かない振りして旭の言葉遊びに乗る。


「えー、こうさんだったら生で食べれちゃうよー。いや、むしろ生で食べたい」

「げっ、絶対腹壊すぞ」

「俺、お腹丈夫だから!!」


ふと、旭を見ると旭も俺を見ていた。頬の赤みはまだ少し残っていて、それが可愛く愛おしい。
その想いが笑みに変わっていたのだろう、旭も笑い返してくれた。
ただ、その笑みは初めて見るような笑みだった。

甘い、そう、甘いのだ。

形のよい瞳が細められ、頬を染め、口を笑みの形に作られ―――見つめられる。
それだけなのに、まるで愛を囁いても可笑しくない雰囲気なのだ。

そんな顔、されたら……旭が俺の事を好きで好きで仕方ない、そんな馬鹿な事を想像しちゃうじゃないか。

その雰囲気につられるように頬が染まりかける。完全に染まる前に俺は旭に声を掛けた。


「そ、そろそろ焼こうか?」


その問い掛けに旭はますます瞳を細め、そして嬉しそうに頷いたのだ。

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